キセキ (ページ11)

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大我side

『もしもし、北斗？』

北斗のスマホから電話をかけると、暫くしてからAが出た。

「えっと、ごめん、俺」

俺が言葉を発した瞬間、気まずい沈黙が訪れた。

『何の用ですか、京本さん』

京本さん。北斗のことは名前で呼んだのに。

「この間はごめん、」

その言葉を捻り出すのに、数秒はかかったと思う。いつも電話で緊張する、なんてことはないのに。

『Tonightの時の事ですか？』
「そう。それを伝えようと思って……」
『では用事は済みましたよね。切ります。さようなら』

そう言って一方的に電話は切られた。

「あ、ちょっと」

電話が切れた音を告げるスマホを、北斗に返した。

「……俺、先に戻ってるから」
「うん……」

少し、1人になりたかった。北斗はその事に気付いてくれたのだろうか。いや、ただ単に面倒くさかっただけかもしれない。どちらにせよ、1人になれたんだからよしとしよう。

すぐにTonightの時のことだと気付いたのは、やっぱり向こうも気にしてたからかもしれない。

「“京本さん”、か……」

他人行儀なその呼び方。いくら昔でもそんな呼び方をされることは今までなかった。

やっぱり、やり直す、普通に喋れるようになる、何て無理なのかもしれない。