◼️. ページ4
姫の胸元のペンダントが放つ微かな光が、展示室の空気をわずかに揺らしたように感じた
(……今、何が……)
その場に立ち尽くしたまま、目の前の“姫”を見つめる
その瞬間だった
――視界が、ふっと揺らぐ
呼吸が浅くなり、世界の色が変わった
目の前にあったはずの展示室の風景が、いつの間にか別の景色に塗り替えられていた。
石畳の広場
黒紫の空に、闇のような魔力が渦巻いている
「・・・・・・・蓮......ごめんなさい・・・・わたしのせいで・・・・・・・こんなことに••・・・・」
泣きながら自分に訴える姫の姿。滲む涙。震える手。
「違う、姫。君は何も悪くない。誰よりも強くて、優しくて...・・・・ずっと、王国のために戦ってきたんだ」
激しい戦いの余韻
そして――最後の約束
「私が眠りについたら、あなたは……？」
「必ず、迎えに行く。何年でも、何百年でも待っていて。
絶対に見つけ出すから」
姫の涙に口づけたあの記憶が、鮮明に蘇る
――それは、夢なんかじゃなかった
現実だった
この胸の奥に刻まれていた、前世の真実
「……僕は……騎士だった」
唇から、自然に言葉が零れた
静かな展示室の中に、彼の鼓動だけが響く
館長は、何も言わずに少し離れたところでその様子を見守っていた
「俺は……君を守れなかった。でも、こうしてまた巡り会えた。だから今度こそ……」
視線を姫に戻すと、その顔はどこか安らかで、美しい眠りについているように見えた
まるで、俺の言葉を聞いているかのように――
そのとき、胸ポケットの中で何かが動いた
それは、小さな銀の指輪
いつの間にか身に着けていたそれを手に取ると、本に記載されていたことを思い出す
『姫が目を覚ますとき、彼女を守る者が必ず現れるだろう。指輪は、誓いの証。迎えに来たとき、それが目覚めの鍵になる――』
――そう、これが鍵だった。
運命は、今、静かに、動き出したのだ
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作者名：みぃぷ | 作成日時：2025年5月8日 18時
