眠れる姫と黒き誓い Ⅱ (ページ12)

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◼️. ページ12

それは夢だった
暗い霧の中
甲冑を纏った自分が、何度も剣を振るっている
目の前に立ちはだかるのは、黒紫のマントを身にまとった“闇の魔導士”
その姿は何度斬っても消えず、炎となり、影となり、また形を変えて現れる

「姫を返せ……！」
叫びとともに剣が振り下ろされる
だが次の瞬間、魔導士の黒い手が胸を貫く
視界が真っ赤に染まり、冷たい感覚が血管を流れていく

(……死んだ……？)

目の前が闇に閉ざされる
しかし気がつくと、また剣を手にして立っている自分がいた
――再び戦場へ
――再び姫を守るために
何度も死に、何度も蘇り、同じ戦いを繰り返していた

“何百年も、何千年も、戦い続けてきた”

その感覚が、夢の中とは思えないほどリアルだった
苦しみも、痛みも、絶望も……まるでそれが“今も続いている記憶”のように身体に染みついている

そして――

夢の終わりには、必ず彼が現れる
闇の魔導士が、冷たい笑みを浮かべながら囁く

【お前の守るべきものは、すぐに奪われる】

その言葉が、鋭く胸を突く
怒りとも恐怖とも違う、深く染み渡る“不安”が心を締めつけた

「っ……はあっ……！」

びしょりと冷や汗をかいて突然目を覚ました
息が乱れ、胸が痛いほど鼓動している
枕元のシーツを無意識に握りしめ、強く歯を食いしばっていた

(……また、あの夢か)

だが今回は違う
ただの夢にしては、あまりに生々しすぎた
夢の中で感じた剣の重さ、死の感触……すべてが、現実と地続きのように胸に残っている

「……俺は……何かを、忘れてる？」

ベッドから起き上がり、窓辺へと歩み寄る
夜の空は、静寂を湛えていた。だがその静けさの中に、どこか“冷たい空気”が混ざっている

空気が重く、星が少し滲んで見える

「もしかして……」

ふと、胸元に触れた
そこには今も、昔と変わらず“あのリング”がぶら下がっている
遠い過去、姫と共に儀式を受け、互いに交わした“守護の刻印”
それが――わずかに、熱を帯びていた

(まさか、奴が……戻ってきてるのか……？)

そう考えた瞬間、脳裏に姫の顔が浮かんだ。
不安に揺れるその瞳、泣きそうな声で自分を呼ぶ姿――
過去の記憶か、未来の予兆か、曖昧なままに焼き付いている

(……何があっても、守る。今度こそ、絶対に)

握りしめた拳に、静かに力がこもる