32話「友達」 ページ34
あの日のことは、一度も忘れたことがない。
忘れられなかった。
それがどんなに、辛い記憶であったとしても。
++++
水 「・・・A、今の、聞いてた?」
どこかデジャヴュ感のある静寂を破ったのは、他でもない水城だった。
純粋な瞳を向けられ、私はぎこちなく頷く。
「・・・ごめん、聞くつもりはなくて、」
水 「いいよ、別に。A、聞いてたんなら、分かったでしょ?・・・唯人に、フラれたんだ」
そう言い放った彼女の顔を直視することが出来なくて、思わず目を逸らす。
唯 「水城・・・」
水 「そんな目で見ないでよ。なんか情けなくなっちゃう」
唯 「・・・ごめん」
私は水城に何も声をかけることができなくて、こんなことはもう何度目だろうと自分で自分にあきれて立ち尽くしていた。
けれど、水城はどこまでも強く、そして優しかった。
水 「Aに、言っておきたいことがある」
「え・・・?」
唐突な言葉に、ゆっくりと顔を上げる。
するとそのまま、頬を包まれて・・・
水 「・・・私のこと気にして、唯人をフッたんだったら、そんなのいらないから。そんなこと、しなくていい。そんな気、使われたって・・・
嬉しくない」
そんなつもりないとか、そんなこと思ってないとか、言い返すことはできたばすなのに。
頬に添えられる手が、指が、温かくて。
優しくて、泣きそうで、喉が詰まってしまった。
うっ、と嗚咽を一度漏らしたまま黙った私に、水城も唯人も何も尋ねてはこなかった。
3分くらいだったか、30分経っていたのかは分からない時間が経ち、呼吸を整えた私は、ゆっくりと口を開いた。
「・・・ない」
水 「え?」
声がかすれて、言葉にならなかった。もう一度、と息を吸う。
「私には、恋が分かってない。
こんな中途半端な状態で、唯人と付き合ったりできない。
だから・・・、やっぱり、ごめん、唯人」
唯人に向かって深々と頭を下げると、すぐに「頭上げて」と声が降ってきた。
言われるままに上げる。
唯人は、・・・
唯 「・・・ありがとう」
その時の唯人の表情は、なぜか思い出すことができないけれど。
あの一ヶ月後、いきなり転校が決まり、ぎこちないまま、私達は離れ離れになった。
・・・もうきっと一生、会うことはないのだろう。
傷つけてしまった友達。
もう、誰にもあんな顔はさせたくないと、決めた。
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あかり(プロフ) - ISLAYさん» ありがとうございます!!そうなんですよー!主人公よりかわいくあれ!と思って書いております←(^^ゞ (2018年11月26日 18時) (レス) id: 8b1d55c97a (このIDを非表示/違反報告)
ISLAY - 諏訪くんって、可愛いですよね。 (2018年11月26日 9時) (レス) id: a0fdea4e50 (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - まひろさん» ありがとうございます^^イラスト集が完結した分、こちらの更新が亀にならないよう気をつけていく所存です!← (2018年11月24日 14時) (レス) id: 8b1d55c97a (このIDを非表示/違反報告)
まひろ - とっても面白いです!!イラストが完結してしまったのは寂しいですが、小説も応援しております!!∩^ω^∩ (2018年11月24日 10時) (レス) id: 117c5ce46f (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - かぐやさん» ありがとうございます!!諏訪くん私も好きなんですよ~。ちょっと、いやかなり私の好みが組み込まれてます笑 (2018年10月28日 21時) (レス) id: 8b1d55c97a (このIDを非表示/違反報告)
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