#A【奏でる】番外編 ページ32
Aのお話です!
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貴方side
顧 「はーい、じゃもう一回最初から」
顧問の先生の言葉で、部員が楽器を構える。
私も唾を抜いてからトロンボーンを構えた。
顧 「さっき言ったこと気をつけてね。いくよ、1、2、3、」
カウントの音の後、出だしの音が響く。
今日は、文化祭前の最後の合奏だった。
先輩達が受験を目前に控えた今の時期、全員がそろってというのはなかなか難しい。
そのため、今日で文化祭の曲を仕上げなけれはならないのだ。
顧 「・・・はい、やめて。今のとこ、トロンボーンもう少し強めに」
「「「「「「ハイッ!」」」」」」
強め、と楽譜に書き込む。
顧 「もう一回、今のとこから」
音楽室に、再び楽器の音が響く。
それが楽しくて、嬉しくて、思わず音が弾む。
・・・先生に何気に睨まれた。スミマセン。
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「じゃーねー」
部 「また明日ー」
部 「ばいばーい」
部員と別れ、昇降口に向かう。
下駄箱の所に、人影があった。
千 「よ。」
「千尋も部活あったんだ!」
千 「ああ。吹部の音聴こえたから、待ってた」
「ありがと!」
別にいいのに、と言おうとして思い直す。
きっと彼氏彼女っていうのは、そういうもんじゃないだって、最近やっと分かってきた。
「帰ろっか」
千 「ああ」
並んで歩くのは今だに慣れない。・・・いや、付き合う前からこれはやってるんだけどね。
でも・・・ほら。
違うじゃん?
千 「・・・A、頼みがあるんだけど」
「ん、ん?なに?」
変なことを考えていたからか、いつもより過剰に反応してしまった。
千 「・・・・たい」
「え?」
千 「〜〜〜っ。」
聞き返したのに、顔を逸らされる。
あれ、千尋なんか顔赤・・・
千 「──・・・手、繋ぎたい」
「っえ、」
どんどん自分の顔に熱が集まるのが分かる。
「・・・っいい、けど///」
千 「・・・さんきゅ」
右手が、千尋の左手に触れる。
・・・うわ、恥ずかしい。
指が絡み、少し冷たい千尋の手がくっつく。
千 「・・・照れるな」
「・・・照れるね」
その日初めて繋いだ千尋の手は、大きくて、骨張っていた。
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