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「私は月の民だったんだけど、蓬莱の薬を服用したことでここに堕とされちゃってねえ。
月の都にとって
命を燃やして生きること、生命を全うし全力で死ぬこと、それらが穢れとされる。
そんな場所よ」
静かに、一つ一つ言葉を落とすように輝夜が言った。
「私は月の民を裏切って輝夜……姫様に従事することを決めましたからね。
そのせいでいつか月に復讐するのではないかと疑惑をかけられているの。
そんな時に地上から月の表側といえど侵略されているわけだから、必然と私に疑惑がかかるのよ。
“ 私がやったんじゃないか” ……ってね。
私や姫様が負けるなんてことはないでしょうが、それで月の都が悪役討伐だなんて言い出したら周りに迷惑がかかってしまうでしょう?
だから、これ以上詮索をするのをやめてほしい、ということが動機よ。
納得したかしら、警官さん」
「お前らのそのためだけに、身勝手に無辜なる民を殺したというのか」
鐵腸が怒りを殺して腹から声を出す。
「あら、そのためだけなんて薄情ねぇ。
こっちには命が賭かっていると言うのに?」
「えぇ。ここには人間だなんて掃いて捨てるほどいるもの、替えなんてまだあるでしょう?」
「………!」
「待ちなさい鐵腸さん!」
永琳の馬鹿にしたかのような口ぶりに鐵腸の堪忍袋の尾が切れた。
条野が一拍遅れて止めるもすでに遅し。
亜光速で鐵腸が剣を抜く。
祝詞を唱えることもなく異能を発動した。
───【雪中梅】───
剣の鋭い鋒が永琳の喉笛を掻っ切った。
空間を彩るように血が噴き出す。
───即死、であろう。
「……鐵腸さん。思いのままに走るのは私が一番嫌いなことです」
条野が静かに言った。
「始末書なら書く。俺はあいつの性分が気に入らぬ」
条野の科白は意に介さぬ、と鐵腸は言外に告げた。
それを悟った条野は深くため息をついた。
誰もが死んだ、と思った。
確かに血が大量に噴き出ていた。
確実に刃は首を貫いた。
──確かにそれらは全て事実。
だが、致命傷を与えれば死ぬ、などそれは人間にしか通用のしない物である。
人間はそれを、どうも誤解しがちだ。
「ふふ、爪が甘いわね」
この光景も、見飽きたものである。
───傷ひとつないその姿に、鐵腸が目を見開き剣を振りかぶった。
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颯貴@東方&文スト大好き人間(プロフ) - 四葉のコトリさん» コメありがとうございます!幻想郷vsヨコハマは私の自己満妄想なので、喜んでいただけてとても嬉しいです…。稚拙な素人ではありますが、これからも読んでいただけると嬉しいです!! (2022年1月14日 19時) (レス) id: 61e081417a (このIDを非表示/違反報告)
四葉のコトリ(プロフ) - 初コメント失礼します!Pixiv見てたら見つけたので来ました!幻想郷をヨコハマが戦うなんて夢のようです!更新頑張ってください!応援しています!文章とても分かりやすいですね!長文失礼しました。 (2022年1月13日 2時) (レス) @page28 id: 9e21ae10ce (このIDを非表示/違反報告)
颯貴@東方&文スト大好き人間(プロフ) - ねこルージュさん» おk、すまねえ…。できたら教えてちょ (2021年12月19日 23時) (レス) id: 61e081417a (このIDを非表示/違反報告)
ねこルージュ - あ、ビビッドアーミーってやつやってるんだけど、その時の名前がこちらなのでyunanaからこれにかえま〜す (2021年12月19日 21時) (レス) id: f9dc735e37 (このIDを非表示/違反報告)
ねこルージュ - ありがとありがと。小説は少々お待ち下さいね〜。ツイステ六章で推しが弱るシーンを本能のままに書きなぐってるとこです…では、かけたら言うわ。 (2021年12月19日 21時) (レス) id: f9dc735e37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯貴@東方&文スト大好き人間 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時:2021年9月28日 19時