【文スト×東方】第三篇 この余白はそれを書くには狭すぎる。

111. ページ34

.





これは、今までの作戦にない新たな勢力が関連している。





数時間前、牢獄にて福地の “ もう一つの顔 ” の部下であるドストエフスキーから受け取った言葉だ。

詳細や理由を訊くも、彼は柔和な笑みを浮かべたまま答えることはなかった。

不透明な実態、消えたシグマとゴーゴリ、意図の読めないドストエフスキー。

しかも、今日は政府上層部の意向により軍警に缶詰と来た。このままでは自分の足で事実を追求することはできない。


今、福地は度重なる都合の悪さに見舞われている。
それもあいまり、彼の機嫌は底辺であった。



──今回、ドストエフスキーによって練られていた完璧な作戦に不調が出たのは数週間前のことだった。



トンネルの異変の調査を遣わしたゴーゴリが突如音信不通となり、作戦より早く天空カジノを与えたシグマが、天空カジノを巻き込み霧のように消えた。

現在、天人五衰に残された面々は、正体が未来の大犯罪者(えいゆう)“ 神威 ” であることを隠さなければならない福地桜痴、胸から下がないブラム・ストーカーと表立って動ける人物がひとりもいない。

無論頼れる協力者などおらず、天人五衰の完璧なはずだった作戦は、突如予想できぬ第三者の介入によって八方塞がりを呈していた。


もちろん、福地がこの状況で何も手を打たなかった訳ではない。

軍警の予想外である招集命令を逆手にとって、猟犬をここへと呼んだ警官に現在ヨコハマに起きている不自然なことの詳細を聞いた。

だが、その情報は情報と言うにはいささか、否かなり情報が少なかった。収穫はなかったと言えよう。

曰く、ポートマフィアから爆発音がするという通報があって、軍警の機動部隊を向かわせたが、通報した人物も機動部隊も、今までの行動の記憶を忘れていた。

唯一、これらが現実だと世界に一個の画鋲で取り留めている電話の履歴も、工作だと言われれば頷いてしまうほどの淡い証拠でしかない。証拠は履歴ただ一つしかない。

それはまるで、騒動そのものがぽっかりと消えてしまったかのようだった。

残されたのは、台風が過ぎ去った嵐の余風だ。



福地は、これらの犯人と天人五衰に介入した者は同一人物だと踏んでいる。
霧に呑まれた部下と騒動、看過はできなかった。



.

112.→←110.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す