【文スト×東方】第二篇この余白はそれを書くには狭すぎる。 (ページ6)

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「…………ポートマフィア……」

国内有数の犯罪組織で、ヨコハマのみを駆ける夜の狗。

隠密・奇襲に長けた彼らの特徴には、八千慧も思うところがあった。

────地獄の隣にある、生前に悪行を働いた者が堕ちる六道の一つ“畜生界”。

吉弔八千慧と驪駒早鬼は、畜生界に巣食う動物霊だ。

畜生界は、強者が裕福を跋扈し弱者が強者に傅く弱肉強食の理念が蔓延っている。

そんな畜生界では、皆が生き残るために組を組んで必死に生きていた。

　搦手こそが最短最良を鉄の掟とする、
暗殺や隠密行動に優れた鬼傑組(きけつぐみ)。

　畜生界最強最速を掲げ、
考えるよりもまず行動の精神を持った勁牙組(けいがぐみ)。

　鬼傑勁牙に比べれば実力が劣る、
饕餮を長とする高飛車軍団、剛欲同盟(ごうよくどうめい)

今、ここにいる動物霊は畜生界に巣食うただの動物霊ではない。

彼女たちは、早鬼は勁牙組、八千慧は鬼傑組を率いる長なのである。

妖異ひしめく畜生界のトップ2の二人。
その実力は、とても普通の尺度で測ることはできない。

己が率いる鬼傑組に、暗殺や奇襲を得意とする人間の作ったポートマフィアがどこまで相手できるのか、八千慧は興味が湧いていた。

「おっ、あれがポートマフィアだなぁ？
私の勁牙組組長の実力、見せてやる！！」

「あっちょっと、待ちなさい！」

早鬼はポートマフィア本部の黒い高層ビルを見るなり、下へと急降下した。

八千慧としては奇襲・隠密作戦の実力を知りたいという故、ポートマフィアにはバレないように潜入するのが目的であった。

それだというのに早鬼は正面突破を図るつもりだ。それはもはや実力の一騎打ちであり、彼女の最も危惧していたバッドルートである。

「まぁ、それぐらいは作戦通りなんですけども」

だが、火に飛び込んでいった早鬼を八千慧が上空から悪どい笑みで睨みつける。

伊達に畜生界トップの頭脳である、これぐらいは予測できて当然であった。

早鬼が陽動(無自覚)している間に忍び込んでポートマフィアをぼろぼろに荒らす。

八千慧はもとよりその作戦で行く気であった。

「カワウソ霊、2階で最も侵入しやすい窓を探しなさい。できれば人気の少ないところに」

八千慧は配下のカワウソ霊に指示を出した。

「判りましたわ、吉弔様〜！」

不安なのは、早鬼は生粋の脳筋なバカということだ。
八千慧はこれからの未来に頭痛を覚えた。