間 め 蕩 間 ページ33
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「そう、全てあの紅葉とかいうやつの言う通りだわ。
私は龍の産んだ不出来な失敗作。信仰も力もなく、死んで転生することもできず、ただ血生臭い畜生界で弱者を甚振るのみ。
それも全て、私たちの存在を認めた人間が悪いのよ。
人間なんかいなかったら、私はこんな泥を啜る思いをする必要はなかった!
人間なんかいなかったら、私は皆に蔑まれることもなかった!
人間なんかいなかったら、私は生まれずに済んだ!!
ただ……それが、悔しくてならなかっただけなのよ。
だから、私は認めさせたかった。私にこんなことをさせる、人間を。
私個人ではなく、私の種族“吉弔”としての誇りとして。
龍に劣ると散々蔑まれた、私に眠る純粋な実力で。
能力なんて使ったら、人間に対してフェアじゃない。
だからといって非異能力者相手じゃただ弱者をなぶるのみ。
それで、私は八雲紫の作戦に協力要請を出したのよ。
マフィアの実力を試したいという、表向きの意向でね。
私は彼ら異能力者、マフィアと矛を交えることで、何か得られるかと思った。
強い人間に勝ち、生きる意味をくれるかと思った。
自分が人間に敗れることで、自分がいらない存在だと言うことを知れると思った。
私を、殺してくれると思った。
だけど、結果は惨敗。
ただの人間如きに負けて、情報を吐いて、地に伏せられて、地雷まで踏まれて。
散々だったわ。
だけど、良かったと思ってるの。
このおかげで、何か吹っ切れた気がするわ。
今まで人間や自分より実力を持った者を呪うことしかしてこなかった私だけれど、少しは自信を見出せたの。
だから、これからも畜生界で生きていこうと思う。
こんな不出来な自分を、自分が好きになるように。
こんな不出来な自分の、居場所が作れるように」
彼女の独白を、ドレミーは彼女の瞳を見て聴いていた。
「…………そうだったのですね」
そう呟きドレミーはまた本を開く。
「その言葉が聞けただけで、私は十分ですよ」
そして、にこりと微笑んだ。
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作者名:颯貴@きっちょー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時:2021年7月18日 17時