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「随分と卑劣な手だね」
「おや、智謀と戦略と合理主義の権化に言われるほどではないですよ」
笑顔で毒を吐いた彼女は、笑顔を消して真剣な眼差しで鴎外を見据える。
「このまま突入すると、彼ら機動隊はビル内に潜む驪駒さんと吉弔さんの部下に食い殺されてしまうでしょう」
何も、彼女ら早鬼と八千慧はたった二人だけで乗り込んだわけではない。
八千慧が紅葉と矛を交えるときに部下のカワウソ霊を利用したように、早鬼も蛆虫のように湧く下級構成員を狩らせるために大量の部下、オオカミ霊を解き放っていた。
今彼ら下っ端動物霊たちは、次の餌はまだかと涎を垂らし唸っているだろう。
このまま彼ら機動隊が飛び込めば、全滅するに違いない。
「───だが、私がわざわざ政府の替えが効く役員に慈悲を抱くと思ったのかい?
ならば君を見通しが悪いと褒め称えよう」
彼女の真意が全て判っているのにも関わらず、わざと判らないよう演じるのは一種の余興というべきか、それとも今ここに居ない観客への僅かながらの善意か。
相変わらず鴎外も皮肉の効いた口撃をかますと、ドレミーが真意の読めない笑みを浮かべた。
「ふふっ、私とてそこまで阿呆ではありませんよ。
でも、貴方とて危惧していることがあるのでは?
……………………異能特務課との関係の悪化を」
静かに告げたドレミーに、鴎外の顔は揺るがない。
あいも変わらず秀麗な顔に不快を貼りつけていた。
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作者名:颯貴@きっちょー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時:2021年7月18日 17時