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止まることを知らぬ弾幕の豪雨。
霊力切れを思わせない八千慧は、やはり畜生界トップの実力と言わざるを得ない。
だが、その途端に彼女の顔が崩れる。
夜叉が、いた場所から跡形もなく消えたのだ。
「ッ──!?」
周りを振り返る八千慧。
その背後に、霧と化した夜叉が刃を握る。
「あがッ」
首を横に薙ぐ夜叉。
彼女から血は、流れなかった。
「!!」
驚く紅葉。
だが、生き物の急所を刺された八千慧に動く余地はなかった。
ゆっくりと斃れる八千慧。
震える足で、紅葉が八千慧へと進む。
「……済まぬのぅ、夜叉の異能の際を狙ったやり口は卑劣だったかえ」
静かに呟く紅葉。彼女からの返事はない。
「っ……く…」
小刻みに震える八千慧。
「……安心せい、私の拷問班に一言聞かせておくからの」
「っ……ふふっ………はははははっ!!」
「っ!? がっ!」
むくりと起き上がった八千慧。
目を見開く紅葉。
突如紅葉を襲う、夥しい弾幕の数。
そこに触れたら作動する時限式の霊術に、紅葉は反応できなかった。
吹き飛ぶ血、漂う霊力、そこに倒るるは夜叉の異能力者。
「私がみすみすとやられると思っていたのですか?
ふふっ、ポートマフィア幹部がなんと情けない」
八千慧はゆったりと紅葉の血に浸った地を跋扈する。
そして、美しい顔に苦悶の表情を塗りつけた紅葉の顔を一瞥し、顎を掬い上げた。
「…………遺言は?」
静かに問いかける八千慧。
紅葉の首元には、ひたりと白銀の刃が添えられていた。
「………どうか、このマフィアには………鴎外殿には、制裁を……加えないでくれぬか」
紅葉の必死の懇願を、八千慧は鼻で笑った。
「ふふっ、安心なさい。貴方は死後に鬼傑組に雇って差し上げますよ」
そして、刃を突き立て───。
「おい、あね………さん?」
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最後のセリフ変更しました
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作者名:颯貴@きっちょー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時:2021年7月18日 17時