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侑李side
お着替えを諦めると、にーちゃんはまた窓の外を眺め始めた。
何か気を紛らわせる方法はないだろうか。
このままだと僕もにーちゃんの気分に引っ張られて落ち込んでしまう。
そんな気がして、必死に頭を回転させる。
どんよりとした空を眺めながら、1つぱっと閃いた。
侑李「そうだ、にーちゃん!お散歩行こう!」
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雨が降ると、お外に出られない。家の中でずっと静かにしてなきゃいけない。
それできっとストレスが溜まってるんだよね。
そんな意識がまとわりついているだろうにーちゃんの頭をまるごとすり替えて仕舞えば良いのだと気がついた。
僕はにーちゃんにポンチョを着せる。
にーちゃんは多分、雨風を凌ぐために傘をさす、なんて事難しいと思うから。
淡い水色のポンチョを着せて、フードを被せて紐を縛ればいっちょあがり!
侑李「なんか……てるてる坊主みたい、」
きゅっとすぼまったフード部分に、まあるく切り取られたにーちゃんの顔はいつにも増して可愛らしい。
そして長めの長靴を履けば準備完了。
いつもしない服装ににーちゃんも驚いているみたいだけど、顔まわりを何かで覆うことが大好きなにーちゃんはすぐに気に入ってくれたみたい。
子供みたいなにーちゃんの手を引いて小雨がぱらつく中、外に出た。
イレギュラーなお出かけに、にーちゃんもきょろきょろ視線を動かしている。
いつも見慣れた街並みも、天気が違うだけで別の場所にきたかのよう。
ぽろんぽろんとにーちゃんのポンチョに雨が当たる音がなんだか心地いい。
侑李「にーちゃん、ほらみて!水溜り。」
水溜りを不思議そうに覗き込んで、びっくりするにーちゃん。
驚いて僕の手を掴んできた。
侑李「あははっ、よーくみてよ。写ってるの自分だってば。」
慧「……、」
変なところでビビるにーちゃんに笑いながら、歩みを進める。
花にかかった水滴をみて目を輝かせたり、初めて見たかたつむりに驚いたり。
ころころと写り変わるにーちゃんの表情は僕の心も軽くしてくれた。
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作者名:あむ | 作成日時:2021年9月1日 13時