カラフル (ページ34)

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侑李side

〈えー、またそれ？たまには違うのしようよ。〉

ご飯を食べ終えた母さんが待ちくたびれたにーちゃんに手を引かれて連れてこられたのはテレビの前。

慧「……ぁ〜、ぁー」

〈まぁ、良いけどさぁ。よく飽きないね。〉

テレビの前に座れと促された母さんはしぶしぶ腰を下ろす。

でも、これを強請られなくなった時母さんはきっと泣いちゃうかもしれない。

僕はこれから何を始めるのか分かっているから、言われる前にDVDをセット。

〈慧、おいで。〉

慧「……っ！！」

膝をぽんぽんっと叩いてにーちゃんを呼んだ母さんの上に嬉しそうに座ったにーちゃん。

〈うおっ、急にっ…。でっかくなったねー、前見えない、笑〉

臨戦体制が整ったようなので、僕は慣れた手順でDVDを早送り。お目当ての歌までかっ飛ばす。

〜〜♪

もう我が家では定番のこの音楽。耳にタコができるくらい聞いたけど、にーちゃんはまだまだ飽きないみたい。

慧「…きゃぁ〜っ、……ふふっ！」

〈わーわー、まだ始まってないって！笑〉

音楽が始まっただけで、声を出しながら体を揺らしまくるにーちゃん。

《バスに乗って揺られてる〜》

《バスに乗って揺られてる〜》

《そろそろみぎに曲がります〜》

《3,2,1！！》

母さんによって体が右側に傾けられると、にーちゃんはきゃははっと笑い声を上げる。

これは、何歳になってもにーちゃんが大好きな遊び歌。

もともと童謡とか遊び歌は好きなにーちゃんだけど、この歌への愛は異常だ。

割と細身な母さんの上で、容赦なく動きまくるにーちゃん。

僕が下になったら潰れるだろうからって「バスにのって」は母さん専門になっている。

あのにーちゃんの楽しみ具合を見ていたら冗談抜きで潰れかねないので僕も黙って見ているだけ、笑

だから僕は、きらきら笑顔を自らのスマホに収める事に集中。

慧「あ゛ぁぁっ！！ぅー！！」

〈はぁっ、はぁ…。えー！！もう1回！？ちょっと休憩させてー、〉

慧「……ぎゃ〜っ！！」

〈…10秒！いや、30秒だけ〜、〉

慧「……やぁーっ、」

〈ぎゃー、慧怪獣だーっ〉

侑李「ふふっ、母さんファイトっー！！」

こんな日常が何よりも幸せで、あったかい。

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