カラフル (ページ17)

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侑李side

侑李「にーちゃん、ごろんしよっか。お口ゆすいで行こう。」

でもにーちゃんは立ち上がる事ができずに、そのままフローリングに転がった。

にーちゃんは前庭機能の障がいのせいで目眩や吐き気が起こりやすい。

きっと今も、視界はぐらぐら揺れて気持ち悪さがにーちゃんの事を攻撃してる。

侑李「にーちゃんいいよ。そのままごろんして。」

フローリングに横たわったにーちゃんは、床が冷たくて気持ちが良いのかそのまま目を閉じた。

相当、気分が悪いのだろう。

慧「……んぅ、…んー、」

こんなに調子が悪いにーちゃんを見るのは久し振りだ。脱走事件からまだ日も浅いし、何処かでつかえていた不調が溢れ出したのかもしれない。

僕はとりあえず、ソファの横を片付けてからまだ、動く事ができないにーちゃんの元に駆け寄る。

熱は無いみたいだけど、顔色は酷い。

にーちゃんは痛いも、気持ち悪いも、熱いも寒いも伝えることができない。

嫌だと思っても声を上げられない。

それなのに家族の僕が分かってあげなければ、にーちゃんはずっと独りになってしまう。

行き場のない感情共に殻に閉じ込められてしまう。

侑李「僕がいるよ、ここにいるからね。」

まだ僕は母さんみたいに上手ににーちゃんの気持ちを読み取ることが出来ない。

にーちゃんが求めている事をしっかりそのまま形で返せた事なんて1度も無いのかもしれない。

だったら僕は、母さん以上ににーちゃんと一緒に居なきゃ。

もっとにーちゃんの事を知って、理解して、支えてあげないと。

侑李「にーちゃん寒くない？」

「体痛くないかなぁ…」

「お水持ってくるね。」

だから僕は今日も、にーちゃんに話しかけ続ける。

僕が諦めたら、それこそ会話が成立する可能性は0になってしまうから。

侑李「にーちゃん、ずっと一緒だよ。」

にーちゃんのふわふわの髪の毛を掬うように撫でる。

すると長いまつ毛がゆっくりと上に上がって、ふわりと微笑んだ。

あ、知ってる。

これはね、にーちゃんの「ありがとう」の顔。

「ねずみいろ」/ end

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