微睡み (ページ31)

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黒 side

「み、水とか持ってくる、」

『…まって、』

さっとベッドの横から逃げ出そうとすると、白い手が俺のトレーナーの裾を掴む。

『……はぁっ…ぅっ、…』

かと思えば、洗面器に顔を近づけてえずく。

……なんで、俺の裾持ったままなんだよ。

『っいかないで』

こいつ、まさか熱のせいで俺を樹と間違えてるんじゃ。

『けほっ……ひとりは、さみしい…おいていかないで、』

人は弱ると人肌が恋しくなるとどこかで聞いたことがある。

大我も本当は心細いのかな。

ずっと、ずっと心細かったのかな。

俺が変に嫉妬して距離取ってた間も、大我の体には病魔が棲みついていて。

俺が知らないだけで、吐くことだって珍しく無いのかもしれない。

でも、それくらい俺は、大我を知らない。

今なら、熱のせいに出来る。…そうだ。明日が来て、大我が俺のことを嫌いでも、全部全部体調が悪かったせいにして仕舞えばいい。

これくらいしかもう、俺たち双子が修復される術は無い。

「……いかねぇよ。どこにも。だから安心して寝て…いいよ。」

『……ほ、く…と、』

なあ大我。できればさ、熱のせいになんてしたく無いから。

こうして手を握って、そばにいたことを明日になっても覚えていて。

そうして明日も、またその次も、据わった意識でほくとって呼んで。

fin

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