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赤 side
「大我、音しんどくない?耳つける?」
『……つける、』
大我は音に敏感だ。
音の中でも好きなものと嫌いなものが大我の中でははっきりと線引きがされている。
例えば、ピアノの音色やミュージカルの演者さんの声は彼にとっては好きな音。
逆に、人のざわざわした話し声とか駅の構内アナウンスとか。公共の場で重なる音は苦手な部類。
劇場に行くまでの道中は、あまりにも大我の嫌いな音で溢れている。
電車がホームに滑り込んでくると、綺麗な顔をぐにゃりと歪めて俺の腕に巻きついた。
『んーっ、…イヤ、』
「叩かないよ、大丈夫。」
自らの拳で頭を叩こうとするから、慌てて制して俺の手で包み込んでやる。
『ジェシー、』
「うん、そうしてていいから。」
電車に乗り込み、隣同士で座ると俺の肩に頭をこてんと寄り掛からせた。
「3つで降りるよ。」
イヤーマフをしている彼にも分かるように指を3本たてて目の前で見せた。
苦しそうな顔をしながらも、こくりと頷いてくれる大我。
大我も同じように指で3を作り、駅に着くたび1本ずつ指を減らしていく。
その指が全てなくなって、グーになった時嬉しそうに俺の膝をとんとんした。
『ジェシー、えき、ミュージカル!』
「そうだね、到着。」
劇場についてしまえば、中は静寂に包まれていてイヤーマフを取ることができた。
「あと、15分ではじまるよ。」
『……?』
15は指が足りなくて、首を傾げる大我を見て、くすりと笑ってしまった。
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作者名:ばにら | 作成日時:2021年10月21日 11時