微睡み (ページ17)

今日:83 hit、昨日:103 hit、合計:315,440 hit

・ページ17

あなた side

発作が始まると、樹くんの頭はぐーっと後ろに引っ張られていく。

繋いでいたはずの手もしゅるりと解けて、胸の前で固まった。

空いた手のひらが寂しくなって、彼の細い肩をさする。

スマホで時間を測りながら、樹くんを見守る。

あまり長く続くようなら救急車を呼ばなくちゃいけないから。

がくがくと震える彼を見るのは、何度経験しても慣れないこと。

でも樹くんが戻ってくる場所を作るためなら私は声をかけ続ける。

少しずつ大きな体の震えは落ち着いてきて、強張っていた手の力が抜けていく。

涎で汚れた口元をタオルで拭って、隣に寄り添っていればゆっくりと樹くんが目を開けた。

『……ぁ、……っ』

「いいよ。無理に話さなくて大丈夫。よく頑張ったね、樹くん。」

とろんとした目でこちらを見上げる樹くん。

発作後しばらくはぼんやりとした意識が続く。

『……て、』

「あ、手離れちゃってたね。」

この時の樹くんはとってもあまあまなの。普段なかなか甘えてくれないから、ちょっとトクベツ。

私が樹くんの脱力した手をとって、きゅっと握ると溶けちゃいそうなくらい可愛い笑顔で笑うの。

『、あぃ、が……と、』

「いいえ。おつかれさま。」

戻ってきてくれて、ありがとね樹くん。

労り時間は、胸焼けするほどあまあまです。

fin

・

青い鳥［@vanilla_0615］

・