微睡み (ページ12)

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黄 side

すると、その声に反応した慎太郎はおそるおそる布団から顔を出す。

慎太郎を捉えたわんちゃんは、ゆっくりとベッドの開いたスペースに乗って、こてんと慎太郎に寄りかかる。

『……っ、』

慎太郎がぎこちない手つきで、黄金色の毛を撫でる。

「ロロって名前なんだ。ゴールデンレトリバーの男の子です。」

ハンドラーさんが慎太郎の隣にきて優しく教えてくれた。

『ロロ…はじめまして。慎太郎です。』

『…わぁっ、ちょっとへへ、くすぐったい！』

慎太郎がロロに向かって挨拶をするとそれに応えるように、自分を撫でていた手をぺろぺろと舐めた。

『かわいい。…ロロ。』

覚えた名前を何度も何度も呼びながら、頭をわしゃわしゃと撫でる。

『はははっ、！舐めすぎだよぉ、』

慎太郎が笑った顔を見るのはいつぶりだろうか。

自分の殻に閉じこもっていた慎太郎が、目を細めてきゃっきゃ笑っている。

そうだ、慎太郎の笑い声はあんなだった。高い声で笑って目を優しく細めて。

病気になる以前で止まっていた時間がゆっくりと動き出す。

『お兄ちゃん、ロロ凄いよ！僕よりボール、キャッチするの上手いんだ！』

「ほんと？俺も見たいな。」

俺にもその懐かしい笑みが向けられて、視界にじわりと涙が滲む。

気を抜いたら溢れてきてしまいそうだった。

真っ暗な闘病生活に光が差した瞬間。

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