好きと気付いたバレー馬鹿【木兎光太郎】 (ページ44)

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44、合宿②⑦ ページ44

「A、木兎さん。……何かあったんですか？」

しばらくして、赤葦が息を切らしながら迎えに来た。
隣には何故ここに居るのか分かっていないのだろう。キョトンとした影山も居る。

「木兎先輩がイライラしてるの」

「そう。で、何でAまでイライラしてるの？」

「……してないし」

木兎が自分に腹を立てているのは事実だ。
しかしAまで腹を立てる必要はない。
先程木兎に冷たく返事をされた位で、こんなにもなるのは可笑しい。

「……面倒な人達だ」

赤葦は一向に視線が合わない二人を目の前に、ボソリと呟いた。

「影山は木兎さんをお願い」

「あ、はいっす！」

赤葦に言われた通り、影山はゆらゆらと歩き出した木兎の隣に並ぶ。

「Aと木兎さんは肝試し失格だってよ。岬姉が伝えろってさ」

赤葦・影山ペアの助けを借りた為、二人は失格。当然の結果だ。
けれどもAはそれどころではない。

「……で、何があったの？」

頑として口を割らなかったAだったが、赤葦のこの低音ボイス。これには敵わなかったようだ。

「さっき夏目から電話来て、」

後ろにいる木兎と影山に聞こえぬよう、ヒソヒソと先程の出来事を話し出す。
赤葦の事だ。きっと溜め息をついて終わるだろう。

「それってさ、木兎さんを意識してるから傷付いたんじゃないの？」

だが返ってきた返事は違った。

「へ、……？」

そしてその内容も理解するのに時間がかかるものだった。
確かこれは木葉からも言われた言葉。
けれどAには夏目と言うイケメンで乙女心が良く分かる彼氏がいる。
その言葉から目を背けていた。

「夏目の事も考えなよ。俺はAのイトコだからお見通しだよ」

「京ちゃん……」

しかし、それと真剣に向き合うのはAには難しい事だ。