好きと気付いたバレー馬鹿【木兎光太郎】 (ページ40)

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40、合宿②④ ページ40

「Aってこう言うの平気なんだなぁ」

「平気ではないですよ。怖い時は怖いです」

「まぁ意外とシャイだったりするし、それもそっか！」

くしゃくしゃとAの頭を満足気に撫でると、Aより一歩先に歩き出す木兎。

「ちょ、先に行かないで下さい！これでも私女です！」

「ん？女って事くらい俺でも分かってるぞ？」

「なら先に行かないで下さい！怖い時は怖いって言ったばっかりじゃないですか」

「あー悪い悪い」

特に悪気はない木兎は豪快に笑う。それにAは溜め息を漏らした。

流石にこんな真っ暗で不気味な森に、一人でいるのは誰でも怖いだろう。
Aは慌てて木兎の横に並んだ。

「こちょこちょ歩くの可愛いなぁ！」

それからしばらく他愛もない話をしながら洞穴を目指していると、ふと木兎がそんな事を言い出した。

「こちょこちょなんて歩いてないですよ！怖くてビクビクしてるんですから」

「だから俺の袖掴んでるのか！」

「え、？」

納得したような木兎の声とは裏腹に、Aはきょとんとして自分の手を見る。

「あ、ごめんなさい！無意識だったので気付かなくて」

Aは照れ笑いを浮かべると、パッと手を離した。

「おい！」

「っ、どーしたんですか？」

すると木兎が声を上げる。もちろんその声にAは一瞬肩を震わせるが、平然を装って返事をした。

「なんで離すんだよ！」

「なんでって普通にですけど……」

「普通になんだ？」

「えっとー。あ、迷惑かなぁって思って。歩きにくいとも思うし」

普通とは何かと聞かれても困る。Aは考えた末に、木兎でも理解出来るよう口を開いた。

「じゃあこうすればいーだじゃんか！」

木兎はAの右手を優しく握る。
Aは何が起こったのか理解に時間が掛かったが、しっかりと握り返した。

「そうですねw温まるりもするし、いいですね」

少し冷え込んできた為か、木兎の耳は真っ赤に染まっていた。

それが本当に寒かったからなのかは、木兎本人しか分からない。