28、合宿�´� ページ28
「脈なしか？」
「そうみたいだな」
「まぁ木兎にはもったいないしな」
部屋のドアの隙間から、木葉、小見、猿杙と顔を覗かせる。
赤葦達は近くのコンビニに買い出しだ。いや、買い出しに行かせたの方が正しい。
何せこんな馬鹿な事をしているのだ。赤葦に見つかっては、怒られる他ない。
「でもさ、絶対木兎、Aの事好きだと思うんだよなー」
「あーそれな。なんかAにだけは他の女子と態度違うし」
「でもA、また彼氏できたって」
三人は顔を合わせると、深く溜め息を吐く。
まだAに彼氏がいなければ、見込みはあったかもしれない。
「難しいな、恋って」
「だな。こんなにくっついてても好きじゃないとか」
「羨ましすぎるだろ」
部屋の中で何やら暴れ出した木兎とAを見て、またもや溜め息を漏らす。
「木兎先輩、くすぐったいですよ！」
「Aって本当脇腹のこちょこちょ弱いよな」
「分かってるならやらないでください！」
木兎は先程のお返しに、Aにこちょこちょを仕掛けた。
脇腹が一番弱いAは畳の上に座っていたが、ごろんと横に転がる。
「ちょっ、A！」
「え、？」
そこで待ってましたとばかりにやって来た事故。
「ぼ、木兎先輩……？」
「あ、いや、……」
二人はどうして良いか分からず、ぼっと顔を赤らめる。
「ぼ、木兎！何やってんだあいつ！」
「急すぎだろ！」
「てかこんなとこ赤葦にでも見られたら……」
「俺に見られたら何ですか？」
三人は恐る恐る後ろを振り返る。
「俺に見られたら何ですか？」
すると、いつもの様に無表情な赤葦がビニール袋を片手に立っていた。
後ろでは鷲尾と尾長が苦笑いをしている。
「何かおかしいと思ってたんですよ。早目に帰って来て良かったです」
三人は怯え、魂はどこかに消えて行った。
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作者名：もやし | 作成日時：2020年10月22日 23時
