15、説教 ページ15
何度か試合を繰り返し、部活も終了。
可愛い1年コンビと正門で別れると、待ってましたとばかりに木兎に捕まるA。
赤葦も隣にいるが、助けてはくれない。
「……A。帰るか」
「は、はい……」
何となく予想はつく。夏目についてだろう。しかしながら木兎には関係ないはず。そんな事を思いながらも、この空気では口に出せぬ。
「何か食べに行きませんか？」
「そうだな。A、何が食べたい？」
“今そんな雰囲気だったか？”と、Aは困惑するも、少し考えてから口を開いた。
「……焼肉で」
その返答に木兎は大喜び。
別に木兎の機嫌を取ろうとした訳ではないが、Aは少しほっとする。
「では、駅前の焼肉屋はどうでしょうか」
「お、そこいいな！」
と言う事で、三人は焼肉屋目指して歩き出した。
しかしこの雰囲気は何とも言えない。あの元気過ぎて困る木兎が一切口を開かないのだから。
「木兎さん。Aが不気味がってますよ」
赤葦がそう言うと、やっと木兎が話し出した。
「俺、Aが辛い思いするのやなんだよ」
拳を固く握り締めながら言う木兎に、Aは罪悪感に呑まれる。
「そりゃあAはバレー一筋だから、相手に悪口とか怪我とかさせられても何も思わないのかもしれない。けど、けどそんな事する奴なんて彼氏じゃない……Aを苦しめてるだけだ」
毎回付き合っては怒られるが、今回は木兎にも相当きたようだ。
いつもの感情的な怒り方とは全く違う。
「A。これは俺も思ってるよ。俺だけじゃなくて、バレー部皆が」
赤葦が付け加えると、余計に目尻が熱くなる。
「ありがと、ございます」
バレー部一同の思いは伝わった。しかし、Aは言わなければならない事がある。
「でも、今回は、……夏目は違うんです」
Aはここまで心配してくれる二人に申し訳なくなり、なかなか顔が上げられない。
「夏目はバレー頑張りたい事とか理解してくれてて、夏目自身もサッカー頑張ってるし、……だから夏目は違うんです」
Aがそこまで言うならば、もう二人に言う義理はないだろう。
「……分かった。幸せになれよ、A！」
「では早く焼肉に行きましょうか」
「おう！」
その後三人は、焼肉を味わったらしい。
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作者名：もやし | 作成日時：2020年10月22日 23時
