15 :汚れずの好中球の機嫌直し ページ16
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「大体骨髄球が赤色骨髄の外に出られるわけ無いだろ帽子見たら思い切り白血球って書いてあるだろうがあいつらは一体僕の何を見て」
「クロ」
「あひぃ!?」
背後からヒヤリとした感覚に思わず変な声を上げて飛び上がった僕は首を押さえながら後ろを振り向いた。
そこにはひんやり緑茶と書かれたコップを持ったシロがいた。
緑という文字から緑膿菌をどうしても連想してしまう僕は再びもう今は亡き雑菌共に対して殺意が膨れ上がっていた。
「クロはこっちだ」
そう言ってシロが僕に渡したのは、ひんやり麦茶と書かれたコップ。
麦茶、あんまり好きじゃないけど...まあ、いいか。
「奴らに骨髄球って言われた事、まだ根に持ってるのか?」
「一生根に持つ」
「そこまでか...」
真顔で即答した僕にシロは溜息を吐いた。
シロには分からんだろうな、この気持ちが。白血球なのに骨髄球と言われたこの気持ちが!
シロは膝に肘を置いて、手に持ったコップを揺らしていた。
少しの沈黙が流れるが、特に気まずいとは思わない。
まだ出会って一日も経っていないというのに、不思議なものだ。
そう物思いに耽っていると、ゆっくりとシロの口が開かれた。
「...クロは、もっと無表情だと思っていた」
「は?なに、突然...」
「よく同僚やほかの白血球から聞いていたんだ、クロのこと。...『汚れずの好中球』だと呼ばれていた」
あぁ...そんな2つ名付けられてたな...そういえば。
ひんやりと冷たい麦茶を喉に通しながら懐かしい2つ名を思い出す。
「もっと無表情であまり感情を表さないと思っていたんだが...今日出会って、ちゃんとクロにも感情はあるし表情にも出るのかって思った」
待って、失礼過ぎない?何なの?シロは僕をなんだと思ってたの?ステロイド剤みたいな機械だとでも思ったの?
「だから、嬉しかった。色んなクロが見られて」
「っな...」
嬉しかった、と言ったシロの目は純粋な慈愛に満ちていて。...眩しいと、思った。
じわり、と知らない感覚が胸の内から湧き上がる。
ああ、なんだろう、顔が熱い気がする。
「...馬鹿じゃないの」
シロに見られるのは癪だから、僕はそっと片手で隠すように頬を覆った。
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海藍 - 凄い、、、 (5月21日 23時) (レス) id: 34bd24184d (このIDを非表示/違反報告)
仁兎 - 鶴丸国永が出てニヤニヤしてしまった…えへへ (2020年7月12日 10時) (レス) id: 01ef15654f (このIDを非表示/違反報告)
まじかるれいん☆ - あああもう展開分かっちゃったふふふふ← (2018年12月30日 21時) (レス) id: 9a258b9a35 (このIDを非表示/違反報告)
蒼空みや(プロフ) - ぷらんくとん。さん» コメントありがとうございます!楽しみにしていただきありがとうございます♪このあとの話もお楽しみに! (2018年9月17日 22時) (レス) id: 7eb3a685bd (このIDを非表示/違反報告)
ぷらんくとん。 - 更新楽しみにしてます! (2018年9月17日 11時) (レス) id: 4eb7efbf3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼空みや | 作成日時:2018年8月21日 3時