第陸章 獏は夢みし-03- ページ47
「キヨ君の人生に何があったかは、僕の口からは言えないかな」
『そ、っか』
「けどね、それを知らなかったからと言って別に僕たちはAちゃんを仲間外れにしてるつもりはないんだよ。お互いの事情を知っている僕たちだって、お互いの傷を全部癒してあげられてるわけじゃないんだ」
『……なんか、もどかしいね』
私は4人のおかげで救われたのに、私は4人を救うことができないなんて。悔しさで唇をかむ。
「だからさ、僕たちは僕たちにできることを、AちゃんはAちゃんにできることをキヨ君にしてあげたらいいと思うよ」
『わたしにできること？』
「そう」
私がキヨさんにできること。その言葉だけがぐるぐると私の頭を巡った。
『私、キヨさんに何ができるかな』
「んー、例えばAちゃんが来てここの雰囲気は凄く柔らかくなったし、そういう雰囲気づくりとかリラックスみたいなのが嬉しいんじゃないかな」
『リラックス』
私がその言葉を復唱すると、ぴーちゃんは意味ありげに口角を上げる。
「そう、例えば――――――」
*
――――――キヨさんって、夜中じゅう起きてるんですか？ずっと？
――――――…でも、そしたらキヨさんはいつ寝るんです
この間あいつに言われたセリフが、一日たった今もまだ胸に残っている。
それを思い出すたびよくわからない感情が俺を締め付けて、きょう一日なんだかうまくいかなかった。
勢いに任せてぼふんと枕に顔を押し付ければ、最近変えたらしい柔軟剤のにおいがふわりと香る。
……人に心配されるのなんか、どれくらい振りだろう。
大真面目にそんなことを考えては馬鹿らしさでため息をつく。
「獏」の人柱として生まれてから、寝ないことなんて当たり前だった。それを疑問視する奴なんて、家族にも、ましてやあいつら3人の中にもいなかった。
だからだろうか、
「…あー、もう」
確かに嬉しいと思ってしまったのだ。Aの心配そうな申し訳なさそうな顔を見て。
昔は女に対してこんな感情湧いたこともなかったのに。
今までとは違いすぎる自分自身がなんだか気持ち悪くって頭を掻きむしった。
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赤の黒犬 - 昔の実況を見ていたら、キヨさんが夢を中々見ないと仰っていて、そこから来たのかなーとか考えられて凄く面白かったです。 (2021年7月1日 0時) (
レス) id: ba80b57016 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 平和組の皆さんが可愛すぎて泣ける!!この物語を見ていると引き込まれていくので時間が短く感じます！頑張ってください！！ (2015年11月2日 0時) (レス) id: 4732783237 (このIDを非表示/違反報告)
咲嶋.ぼ(プロフ) - お話の構成がとてもしっかりしており、凄く引き込まれる作品で 大好きです。更新待っております。 (2015年9月9日 1時) (レス) id: 573b4c2ac8 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - とても面白いです！たまにはいる挿し絵？も可愛いですね！ これはもう更新しないのですか？ まってます (2015年8月22日 23時) (レス) id: 016ebdc3e0 (このIDを非表示/違反報告)
Χ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。文章や言葉のチョイスに心を鷲掴みにされました。また随所で入るイラストも私にはドストライクで、この小説と出会えてよかったです。 (2015年8月16日 14時) (レス) id: ffefa26ae0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宮前
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=miyamaenovels
作成日時：2015年2月9日 17時
