第弐章 物の怪に罹る-了- ページ19
『…なんで、』
何で此処にいるんですか、キヨさん。寄宿している生徒しか入れないはずの学生寮に、なんで。
「事情を話して管理人さんに開けてもらった。…悪かったよ、何も知らずに俺の都合で追い出しちまって」
『なんで此処だってわかったんですか、私、何も言ってないのに…』
なんでいつも、辛い時に助けてくれるんですか。その疑問は言葉にならずに涙で流れた。
「こんな所、もう来んな。帰るぞ」
『でも、キヨさんは、それじゃ……』
「悪かったって言ってんだろ。もう帰れなんて言わねえよ。お前が居たい限りはな」
立てるか？キヨさんが優しく手を差し伸べて、私はそれを掴む。
「レトさんが下で待ってるから。P-Pはお前の着替え用意してくれてるし、つわはす君は必要な家具貰いに行ってる。少なくともここよりかは、住み心地は保証するよ」
『……すみません、私、迷惑ばっかかけて』
「お前な、辛いときは辛いっていうのも人に迷惑かけない方法だぞ」
俺が言えた義理じゃねえけどな。キヨさんが小さく笑う。
*
「ごめんなあ、俺はAちゃんがすごい頑張ってたこと知っててんで? でもな、このポンコツ内弁慶が勝手なことしてな…ほんま最低やろ…」
車を運転させながら、レトルトさんが何度も私に謝ってくれる。私はどう返したらいいかわからず笑うばかりだ。
「もーいいでしょレトさん! 俺すっげー反省してんだからね!?」
「反省してるかしてないかはAちゃんが決めることや!このバカちんが!」
「俺バカじゃないもん! 少なくともレトさんよりは!」
「確かにそれはそうやけどな!」
レトルトさんとキヨさんの掛け合いに、思わず笑ってしまう。
しばらく車は道路を走って、いつの間にか見覚えのある道に出ていた。何度見ても豪華な一軒家の外にある駐車場にレトルトさんが車を止める。
「ほら、着いたよ。Aちゃんお腹空いてへんか? キヨ君の分のご飯、まだあるはずや」
「俺の分は!?」
「キヨ君は今日はご飯抜き!」
わいわいと騒ぎながら、2人は車からでた。私もそれに続く。
「…Aちゃん?」
一人立ち止まって後ろを向いていた私を不思議に思ったのかレトルトさんが私を呼んだ。
いつの間に雨が降っていつの間に止んだのだろう。道には水溜りができていて、私たちは知らず知らずのうちにそれを踏んでいた。
乾いた道には三つの足跡。
…それは、私がずっと望んでいたものだった。
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赤の黒犬 - 昔の実況を見ていたら、キヨさんが夢を中々見ないと仰っていて、そこから来たのかなーとか考えられて凄く面白かったです。 (2021年7月1日 0時) (
レス) id: ba80b57016 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 平和組の皆さんが可愛すぎて泣ける!!この物語を見ていると引き込まれていくので時間が短く感じます！頑張ってください！！ (2015年11月2日 0時) (レス) id: 4732783237 (このIDを非表示/違反報告)
咲嶋.ぼ(プロフ) - お話の構成がとてもしっかりしており、凄く引き込まれる作品で 大好きです。更新待っております。 (2015年9月9日 1時) (レス) id: 573b4c2ac8 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - とても面白いです！たまにはいる挿し絵？も可愛いですね！ これはもう更新しないのですか？ まってます (2015年8月22日 23時) (レス) id: 016ebdc3e0 (このIDを非表示/違反報告)
Χ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。文章や言葉のチョイスに心を鷲掴みにされました。また随所で入るイラストも私にはドストライクで、この小説と出会えてよかったです。 (2015年8月16日 14時) (レス) id: ffefa26ae0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宮前
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=miyamaenovels
作成日時：2015年2月9日 17時
