#59. 〃 side ページ9
『ごめん』と小さく呟くA。ワッと頭や頬を撫でて俺の方を向かせた
「お前本当に気を付けろよ、男が全員女が好きだと思うな。そして離れんな、嫌なら殴ってでも止めろ」
『おう、』
「そして叫べ、俺らが来れなくても叫んだら絶対誰かは来るから」
『…』
「約束」
指切りげんまん、と約束を交わす。こんな事小学生以来だ。
指切った！と指を離すと同時にクラスメイトと話していた倉持が駆け寄ってくる。
「なんの指切り？」
「これから先の事」
「なんだそれ」
はは、と笑っている時、ふと思い出した。真っ赤になっていた倉持の事を。
少しカマかけて見るか？とAに向き直って俺はまた口を開いた
いつの間にかオレンジ色の空も紫がかっており、先程までいたクラスメイトも帰ってしまっていた。
教室には3人、カフェだったこの場所はすっかり普通のクラスに戻っていた。
「あと1つ、隠してる事あるだろ？」
『は、何？何が…？』
「…なぁ、倉持」
「んなっ…何が、」
悪い笑みを浮かべていたと思う。意外にもAより倉持の方に効果があった様子。
薄暗くても分かる程真っ赤になっており、俺とAから距離をとる
すると、Aもじわじわと耳が赤くなっていく。なにか思い出したんだろう
『あれは、なんて言うか…口が気持ち悪くて、こいつならって、』
「へぇ、何したんだよ？」
『ああ…ええと…キスした…本当に出来心…。』
Aの口から出た言葉に目ん玉が飛び出そうなくらい驚いた。
「はぁ？！」と倉持、Aを交互に見る。お互い顔を隠して恥ずかしそうにしているのなんか空気を読まず倉持に詰め寄った。
なんで、どうして、どっちから、と。
そしたらAから、いきなり、何故かは分からないとの返答。
「…まじ、」
『……俺に嫉妬しちゃった？倉持とちゅー出来なくて御幸くん残念？』
何故か調子に乗り始めたA。俺に近づき肩に手を置いてニヤニヤと笑みを浮かべている。
誰が倉持なんかとキスしたいと思うのか。こいつの事を褒めるAの後頭部に手を回し、そのまま俺も口を付けた。
あの大学生とも、そして倉持ともするなら俺ともキスくらい出来るだろう。
体感で言うと5分、実際は数十秒だったろう。深い口付が終わるとAは俺の胸を手のひらで軽く叩いた。
可愛い。倉持は一足先にこんな可愛いAを見たのかと思うと少しムカッとするが。
「これでおあいこな」
「御幸お前ッ…！」
『俺安くないのに…』
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作者名：宮
| 作成日時：2022年8月3日 1時
