4 ページ20
結果からいうと、俺は生きている。
死神が連れていってたのは俺じゃなかった。
明け方、耐えられない程の下腹部の痛みと、敷布の濡れたヌメリとした感触に脂汗をかきながら必死に助けを求めた。
なんで今の今まで気づかなかったんだろう…照が生きていた証は…俺の中にあったのに……
「おねがい…たすけて…」
つい数時間前、死神に連れていって欲しいと願ったくせに、今は助けてくれだなんて、本当…笑える…
次に目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。
「残念ながら…」という医師の説明に俺は枯れたはずの涙をまた流した。
ダルさや吐き気、微熱の症状は一切なくなっていてた。
それなのに甘くて優しい、温かいリズムが体内から聞こえた気がした。
あの子を連れていったのは天使だったんだ…
そう思った。
なのに…
空っぽになったはずのお腹はどんどん大きくなり、数か月後銀糸の髪の毛を持つ赤ちゃんが生まれた。
「ねーママ、」
「ん？」
「この映画知ってる？」
ラウールが見せてくれたのは、いつか照と見た映画。
「今日めめと見たんだー。リバイバル上映？ってやつなんだって」
「わー、懐かしい」
「ママ、見たことあるの？」
「うん。むかーしね、パパと見に行ったの」
「そうなんだ」
「ふふ。懐かしい、ママも行きたい」
「ママ、いきたいの？」
「うん、行きたいな」
「よかったぁ」
ラウールがニコ、と笑う。
「え？何が？」
「ううん。こっちの話」
甘くて柔らかい日常の中。
俺は永遠に覚めない夢の中にいる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 238人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うの(プロフ) - ぽんさん» コメントありがとうございます。細々と更新していきますので暇な時はまた読みに来て下さいね!(^^)! (2022年8月9日 16時) (
レス) id: 312a545c23 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん - 突然コメント失礼します。密かに読ませてもらっています。紫さんの出てくる作品が好きです。こぎつね、もしや紫さんもレギュラー参加の予定ですか？可愛いですね。これからも色んな短編集を楽しみにしています。 (2022年7月30日 15時) (レス) id: 06d404138f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：うの
| 作成日時：2021年11月1日 11時
