あまくて、ずるい、きみのせい (ページ20)

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「たっちゃ…」

「たっちゃんってば…！」

ようやく足を止めたたっちゃん

ぐいぐいと引かれた腕がジンジンと痛む

『…なぁに、どったの』

な、なぁに…って

「さっきの、なに。あんなのあべくんに失礼だよ」

「それに、たっちゃんの彼女だって…」

『乃愛さぁ、』

『俺のこと、ふっかって呼ぶんじゃなかったの？』

「えっ…」

しまった…忘れてた、というか癖だった

てか、いつから聞いてたの…

『まぁ俺、お前にふっかって呼ばれんの嫌なんだけどね』

…へ、？

そんなあだ名に嫌…って

『んでもぉ？なこと言ったら、余計に意地っ張りな頑固ちゃんの乃愛は俺の事ふっかって呼ぶだろうからさぁ…』

『たっちゃんって呼んだら、その回数分ちゅうしよっか』

は…

「はあっ！？」

『ふは、変な顔。んー？どったの乃愛ちゃん？はじゅかちいの？』

「た、…たっちゃんのバカ！！」

『あーあ…』

あー…、あぁ！？

「違う違う違う！！私いいよなんて言ってないから！約束してないから！！！指切りげんまんもしてないもん！！！！」

『指切りって…まだ俺、何も言ってないけど』

「ま、…まだってことは、これから言うつもりだったんじゃん！」

『はぁ。ちょーっと見ないうちに達者なお口になっちゃって』

「んも、やめてよ…！」

いつもそうやって私のことを赤ちゃんみたいに扱って

からかってくるきみ

「た…ふっかのいじわる！」

『…ふぅん。やればできるじゃん』

「そ…それに、もうしないって！今朝バスで言ったじゃん！」

『んー…そうだったっけぇ？』

「そう！言った！」

『んは、そうなの？』

「そうなの！」

都合のいい時だけ忘れたフリしないでよ

私、優しくなんてないから

逃がしてなんてあげない

『でもさぁ…おれ、忘れちゃった』

でも、たっちゃんも優しくなくて

逃がしてなんて、くれなかった

人生で二度目のそれは、なんてことない道の真ん中で

出来たばかりの友達と、大事なきみの彼女を置いて

私を攫ったきみと

柔くて、脆くて

あまくて、ずるかった