あまくて、ずるい、きみのせい (ページ15)

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真っ白な無地のパーカー

その上に羽織っているのは、春らしいパステルカラーのニット

シュッとしたボトムスに

肩から提げているトートバック

小さな顔には、丸い眼鏡が掛けられている

「初めまして。阿部亮平です」

一言で言えば、可愛い男の子だった

『へぇ、乃愛ちゃん軽音部だったんだ。ちょっと意外』

「あべくんのサッカー部もギャップあるよ」

『そうかなぁ？』

「あ、じゃあ、めぐ…目黒蓮、知ってる？雪高のサッカー部キャプテンだったんだけど…大学も一緒でね、今日はバイトがあって来れなくなっちゃったんだけど」

『めめ、だよね。知ってる！』

「ほんとに！じゃあ、大学とかでも会うかもね！」

あべくんとの話は率直に楽しかった

最初こそぎこちなかったけど、学部が同じというのは大きくて、周期表の話題からとんとん拍子で弾んだ

いつの間にか佐久間先輩もいなくなっていて、気を使ってくれたのかなと思うと、申し訳ない

昨日のことも謝れずじまいだったし…

『ねぇ乃愛ちゃん。ちょっと外行かない？』

「へっ？」

『ここ出たとこの川沿いの桜が綺麗でさ。ちゃんと見たことなかったから、良ければどう？』

「行きたい！私も桜見たい！」

『ふふ、じゃあ行こっか』

椅子の背にかけていた上着を取って立ち上がる

既に立ち上がっていたあべくんはもうレジの方にいて

あれ…伝票は？お会計、できない…

『乃愛ちゃん、行こ？』

「あ、あべくん！伝票が、ない！」

『え？あ、ふふ。もう俺が払ったよ』

「え！？」

『早くー。置いてっちゃうよ』

「え！やだ！待ってよあべくん！」

くるりと座席を振り返って忘れ物がないか確認する

うん、あべくんのところも大丈夫

『はーやーくー』

「うん！今行く！」

あべくんって意外といじわるだなぁ

でも、心を許してもらってるみたいで嬉しい