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9月上旬八王子南署管内の重点密行中、遺体を発見したと通報を受けて私たちは現場へ向かった。
科捜研と鑑識に挨拶を済ませてブルーシートの内部に入る。
遺体は布に包められていて、ロープで頑丈に縛られていた。さらに、土の中に埋められていたため、遺体のすぐそばに今掘り起こしたような形跡が残っている。
「ねぇ、これ、なんて字？」
ロープに札がつけられていて、獣という字の左側が書いてある。うん、読めない。
私がバカだからという問題ではない。こんな字、学校で習わない。
鑑識がロープを切ってついに遺体と対面する。
そのせいで遺体独特の死臭が充満してきて、私たちは思わず顔を顰めた。
遺体は黒く変色していて、死んでから大分時間が経過しているようだ。とりあえず手は合わせておこう。
「成人男性小柄。20代から40代、死後1ヶ月は経ってる。胸に刺し傷、見ただけでも5箇所。」
科捜研様の、一切表情を変えることもせず淡々とした報告に、すげぇ…と感激を受けた。慣れなのか、ただ普通に平気なのか…どちらにせよスゴイ。
「手はどうなってます？」
「指が切り落とされてる」
「ヤクザの指詰め？」
「いや…小指は残ってる」
「人差し指、中指、薬指の三本がない。両手とも。
…被害者、クリスチャンなのか？」
遺体の首から血がべったりとついたペンダントが下がっていて、モチーフは十字架に張り付けられたイエスだ。確かに信仰していたのかもしれない。
「おらっ！どけ！邪魔だ！」
騒がしい声が聞こえて振り向くと、はげのっぽ…もとい刈谷さんがいた。
「お前ら…」
「どうもー機捜の伊吹でーす。志摩の相棒の！」
「4機捜のAです。」
「…お久しぶりです。」
「はっ、とっくのとうにクビになったと思ってたよ！」
志摩さんと刈谷さんが犬猿の仲なのは知っていたけど、マメジと隊長以上の険悪なムードに私は顔を伏せて笑いを堪えた。
「あのな、香坂の件は勘違いなんだよ。」
「いいよ、話すな。いいから」
刈谷さんに厭味を聞いた伊吹さんは喧嘩を買おうとしたが、志摩さんになだめられて大人しくなった。おお、主従関係…
「お前らの相手をしてる時間はねぇんだよ！
本件はこれより捜査一課の担当になる！情報は全て機捜ではなく直接俺にあげるように！！」
「うるさっ…」
「感じわるー！」
「やけに早いな。初動捜査すっとばして」
「これは単独の事件じゃない。未解決の連続猟奇殺人だ。」
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作者名：古町小町 | 作成日時：2020年10月18日 17時
