のんきな猫と死にたがり (ページ44)

今日:25 hit、昨日:15 hit、合計:162,957 hit

3#17 ページ44

＿＿

＿＿＿＿＿

「確保した高校生達、家裁送りになった。
　十分反省してるし重い処分にならないと良いけど…」

「甘いんですね」

昨夜の事だというのに、虚偽通報の事件は半日のうちに瞬く間にネットニュースに広がった。
ネットでは実名と顔写真が出回っている。ぼかしもなしで。

「ネットに広まったおかげで本来受ける以上の社会的制裁を受けてる」
「お怒りだな」
「罪を裁くのは司法の仕事。世間が好き勝手に私的制裁を加えていい理由にはならない」

「捕まってないもう1人は？家に帰ってない子」
「…西武蔵野署の少年係に引き継いだ」

真木カホリの捜索で、犯人役の1人だった成川岳に逃げられてしまったらしい。
そして未だ行方不明のまま…

「ドーナツEPの件は？売人してた卒業生」
「陸上部の名簿は全てシュレッダーにかけられた後だった。でもこのまま逃がすつもりはない。組対5課が動き出した。何かあればヘルプの連絡が来るでしょう。今回の仕事はこれで終わり。以上」

「隊長！今夜飲みに行きませんか？
　4機捜の親睦会！」

伊吹さんから下心アリアリなのが読み取れる。色を見なくても声質と表情から簡単に。

「パス。みんなで行ってきて。
　私これからデート」

堂々とデート宣言されたら伊吹さんも引き止められず、見事間抜けな顔で撃沈した様子。
隊長が鞄を持って私の横を通り過ぎる。お、今日は説教無しか…

「あ、」

リーチに差し掛かったところ、手前でビンゴ出来なかった。
隊長の足音が止まる。嫌な予感がして振り返られない。

「Aの件は…」
「俺が、ちゃんと言っておきます」

志摩さんに肩を掴まれた。あ、逃げられない。
その様子に隊長は満足そうに微笑むと「…そう、頼んだ」と言って、爽快なヒール音を立てながら分駐所を後にした。

「あんな堂々ときゃっきゃうふふ…」

伊吹さんのボヤキが聞こえてくる。
あれが、俗にいう"うふふる"というやつか…

「だからきゃっきゃっうふふじゃない」
「いやうふふだろぉ？
　彼氏とデートなんだから…」
「子供。桔梗の子供」

「「…えっ？」」

「息子がいるんだよ、まだ小さい…
　ってAも知らなかったのか」

「初耳です…」

隊長と知り合ったのは二年以上前だけど、お互いにプライベートで仲良くしていたわけではない。
勝手に隊長は仕事一筋だと思っていたから意外だった。

「よし、で、Aはそこに座ろうか」

志摩さんのその一言で背筋が凍ったのは言うまでもない。

→