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伊吹さんの後からやってきた志摩さんの怒声に耳を塞ぐ。
怖い怖い。スタンガン男より100倍恐ろしい。
「そんなことよりあっち!!スタンガン男!!」
顎と目線で指すと、「いででで!!」と悶える伊吹さんがいた。油断してたのか電気を食らったようだ。
志摩さんは「あーもう!!!」と怒りながらもそっちへ向かい、スタンガンを蹴り飛ばすと男を取り押さえた。
「21時52分うああああ!!!」
あ、いうの忘れてた。二台以上持ってるって。
座っている私からは見えないけど、多分志摩さんも食らったな。すみません。
「嬢ちゃん!!あいつらは!?」
「あっちなんですけど…」
駆けつけてきた陣馬さんと西武蔵野署の刑事2人に状況を説明していると、"ザブン!!!"と水に何かが落ちる音が聞こえた。
「多分下です!!下の方がいい!」
「おし、待ってろよ!!!」
数秒後「21時53分!!!」という陣馬さんの大きな声が聞こえた。
正真正銘逮捕できたようだ。よかった。
目線を下げて自分の手のひらを見る。
グーとパーを数回繰り返していると、さっきよりは回復したみたいでだんだん力が入るようになった。
_ぽた、ぽた、
手の奥で床に水滴が垂れてるのが見え、さらに私に影が覆い被さった。
見上げると、びしょびしょで仏頂面の志摩さんと口角を上げた伊吹さんが。
とりあえず会釈して「お疲れ様です」と声をかけると、志摩さんの肩がわなわな震えた。
「こんのバカが!!!」
志摩さんの怒声(パート2)に思わず肩を竦める。
「前にも言っただろ連絡を必ずしろって!!無線は繋がらねえし電話も出ない、お前はいつになったらやるんだよ、隊長にも言われたばっかだろ!!」
「Aちゃん…」
一見していつもと変わらない笑顔の伊吹さんだけど、なんか威圧感がある気がした。目の奥が全然笑ってない。
終わりよければ全て良しじゃないですか。
犯人役の子も確保できたようだし、真木さんも救えてわいせつ犯も捕まえた。事件解決できた。
あれか、インカム投げつけて壊したからか。
始末書コースだもんな、何枚書く羽目になるんだろう。
でも、
そんなことより
「ごめんなさい」
今必要なのは誠心誠意の謝罪。
謝るだけじゃ怒りが収まらないのは知ってるけど…
「立てるか?」
「怪我してない?」
さっきとは違う優しい声に顔を上げると、私の目線に合わせて志摩さんがしゃがんだ。
「お前が車の鍵持ってんだろ?ほら、貸せ。
…帰んぞ」
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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月12日 0時