のんきな猫と死にたがり (ページ39)

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もう一度やるなら…
私は目を瞑り脳裏に武蔵野市の地図を書き起こした。

「A…？」

よし、いける。

「隊長」

考えが纏まったところで挙手して隊長を見つめる。

「ふんわりした臆測を話してもいいですか」
「え？」

一瞬だけ表情が固まった。嫌なんだろうな。
その様子を気にせず私は壁に立てかけてあった大きいサイズの地図をホワイトボードに広げて貼り、タブレットを手元に用意した。

「伊吹さんの言ったとおりにもう一度彼らが走ると仮定すると…
　次の公衆電話は桜前4丁目公園か、西武蔵野工業団地だと思うんです。工業団地の方が有力です」

「有無は聞かないのか」と志摩さんの声が聞こえた気がしたけど無視して、地図に見やすいように印をつける。

「どうしてそう思ったの？」

「1回目は三幡森公園、二回目は冨寿公園、三回目は成南第一公園、そして四回目はつつみ市民公園。どれも公園内、もしくは公園前にある公衆電話から通報がありました。
　どの公園も広くて開放感のある場所で、さらに駅前のような明るいところではない、
　暗いところが多くて人通りも少なくて死角も多い。それに、四回目の場所以外は平地です。
　不審者とか、逃げるのには適しています。」

試しにこれを見てください、とタブレットで伊吹さんの証言をもとに作った4回目のコースを見せる。

「死角は多いといっても、逃げる際に多くの曲がり角を使っている訳ではありません。ちゃんリレーのようにバトンを繋いで走っています。走った距離は…大体1600m」

「4×400mか！」

陣馬さんの声に深くうなずく。

「んー、4丁目公園はわかるけどさ、なんで工業団地がアリだと思ったの？」
「彼らの“テリトリー”だからです。」

4丁目公園の近くにはコンビニもなければ周りはただの住宅街。何もない。確か泥濘みたいなのも多くて走りづらかったはず。
それに比べて工業団地の方は平地でアスファルト。堅い地面は足に悪くとも泥濘よりは走りやすい。しかもバトンをばれないよう渡せる死角と直線も多い。入り組んでいるかもしれないけど彼らのテリトリーなら迷うはずがない。

「A」
「はい」

隊長から低い声が聞こえる。あれ、一人でベラベラしゃべりすぎた？
謝る準備でもしておこうと覚悟していると「さすがね」と褒められ、予想外の言葉に私は腑抜けた声が出てしまった。

「23区だけかと思ってたけど、多摩地域も頭に入ってるのね」

そう言って隊長は口角を上げた。

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