のんきな猫と死にたがり (ページ17)

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「で、何をどうしたら1日で車が廃車になるの？」

やっぱりそうなりますよね。
志摩さんに合わせて頭を下げる。
…私は悪いことした覚えはないが、連帯責任というやつだ。仕方ない。

「「申し訳ありませんでした」」
「でも犯人は捕まえました」

伊吹さんの放った台詞に顔が強張る。何を言ってるんだこの人は。
これでは隊長の逆鱗に触れてしまう、私は顔を上げられなかった。

「今それ言う？馬鹿なの？」
「ん？」
「すみません、めっちゃくちゃ馬鹿なんです」
「ん？？」
「隊長、お土産がありますよ。犯人とお土産が」
「犯人の会社はハーブと称してマリファナを扱っていました」
「運転時にも摂取していた可能性があります」
「俺のお手柄っすよね！」

401コンビのフォローに感謝したい。のにまた伊吹さんが空気を乱す。
マメジの野郎、私以上に輪を乱すやついますよここに。
私に説教する前にこの人にするべきじゃなんか！！

「人は足りないし車も足りない。
　予算は限られてる。どんなに極悪な犯人を捕まえようと1日で車を廃車にする人間は機捜には置けません！！！

　次はない。分かった？」

「はい！」

力強い返事をして今度こそ私は隊長室を出た。

「志摩、残って」

「…はい」

＿＿＿＿＿

「志摩から見て、伊吹はどう？」

報告の後、桔梗が志摩だけ残るよう告げたのには理由があった。
伊吹を奥多摩に返すかどうか、彼に一任しているからだ。
桔梗からの質問に志摩は少し考えるそぶりをすると、何か思い出したようでフッと鼻で笑った。

「ただのバカかと思ったら、野生のバカでした。
　刑事の常識から教えなくちゃならない」

「適性がないなら外すけど」

「んー…」

・

たった1日、されど1日
共に過ごしてみて思うことは多い。
足が速いことだけが取り柄だと思っていたが、

『機捜っていいな。誰かが最悪な事態にとめられるんだよ？超いい仕事じゃん』

と笑った彼を忘れられない。真っ直ぐで正しい奴なんだろう。

・

「ひとまず保留でお願いします、ひとまず。」

桔梗は彼から何か感じ取ったのか笑いながら「分かった」と返事をした。

「Aはどう？」

「さすが検挙率トップの刑事ですね。ただ単独行動しがちな所が不安です」

「また一人で動いたの？
　…伊吹同様、ちゃんと手綱を握ってあげてね。これでも可愛い後輩だから」

頼んだよ、そう言って桔梗は志摩の肩を叩くと部屋を後にした。

～第1章激突完～