のんきな猫と死にたがり (ページ14)

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無線から騒がしい声が聞こえる。

『機捜401から警視庁。昨日墨田区曳島で発生した重傷傷害事件の容疑車両が逃走！！』

どうやら陣馬さん達が見つけたらしい。
私たちも犯人に少しでも近づけるように近道して狭い通路に入る。
路駐の車のせいで普通自動車一台が通れるか通れないかのギリギリの広さを、志摩さんはスピードを落とさないまま走り切った。
さっきから志摩さんの運転にはヒヤヒヤしっぱなしなのに、どんどん上回っていく。この人も無茶するな。

路地を抜ける手前で犯人の乗った車と思われる白い車を発見した。

「ナンバー一致です」

「はい白色のステーションワゴン止まりなさい！はいスピード落として！」

伊吹さんの忠告を聞かずに犯人は速度を上げる。
漸く隣に並び、その間も声をかけ続けるが止まる気配を見せない。

「前赤信号です！」
「赤だ止まれええ！！！」

最悪な事態だ。このままだと横断歩道を渡る歩行者達を巻き込みかねない。
どうしたらあの暴走車は止まるか、
考えても考えても答えは導き出せない。脳内がパニックに陥った時

「しっかり掴まれ」

志摩さんの静かな声が聞こえた。彼の指示通りにとりあえず車内のグリップを強く握る。

志摩さんはミラーで隣後ろを確認するとアクセルを強く踏んで白い車の前に回り込んだ。
しっかり掴まれ、とはこの事に備えろという意味だったらしい。そして私は久しぶりに死を覚悟した。
白い車は止まる事なく私たちの車に突っ込んできて、私たちの車は1回半くらい横転してやっと止まった。エアバッグがちゃんと作動してくれたため軽傷で済んでいると思うが、シートベルトの衝撃やその他諸々で身体中が痛い。

「おい生きてるか！！」

「A！！大丈夫か！？」

声が聞こえたほうへ徐に向くと、志摩さんが私の方へ手を伸ばしている。
シートベルトを取ってその手を握ると私を引っ張り上げてくれた。
外に出て関節を動かしてみると案外平気なようで、動けると分かった。もしかしたらアドレナリンも出ているのかもしれない。

「犯人は…？」

「車で向こうへ…
　今は伊吹が追ってる…っておい！！」

血が出てようがなんだろうが動けるなら…
そう思って私も伊吹さんを追うように駆け出した。

「…あ、いつら！！！！！
　事故車両お願いします！」

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