[短編集]Everyday life with you[wrwrd][完結]

何時になれば(zm) ページ5

突然のことだ。




自身の声が出せなくなった。

しんぺい神曰く、ストレス性のものだろうと言われ、当分休養をすれば良くなるだろうとも言われた。



しかしその診断からもう早2週間。



いつ治るかも分からないそれに
私の焦りは日に日に募る。
休養を、と言われたせいで彼らの手伝いや自身の仕事は出来なくなった





トントンの隈がまた酷くなっているのも分かっている。
それでも手伝わせてはくれない
私の体を第一に考えてくれるからだ

負担をかけている。
そう思えば、何もかもが申し訳なかった








今日も今日とて声が出ない。
窓の外をぼーっと眺めていると鳥のさえずりが聞こえた
羨ましい、
今はそんなさえずりさえも真似することは出来ない


声を出そうとすれば何かが邪魔をするのだ
何かが喉につっかえて、音を塞(せ)き止めて。




もう嫌だ、なんで…。



自分の無力さが情けなくて、膝を抱えれば
頭上からカタリと音が聞こえた



ゾ「A、遊びに来たで」


突然現れたゾムの姿に
いらっしゃいの意味を込めて微笑む。



不器用な癖に。嘘つくの、苦手な癖に。


描いた弧はあまり綺麗ではない、
無理矢理作った笑みを貼っつけて彼は先程まで行っていた悪戯を話し始めた





シッマを追いかけ回してきたこと、
トントンに食害しようとしたら逃げられたこと

そんなに沢山本当にしたのか定かではないが
気にせず私がくすりと笑みを零せば、
やっと彼の弧が綺麗に月を描いた。




それから彼の話を聞いて、頷いて。
気づけばもう夕暮れが窓から射し込んでいた

随分と彼の時間を使わせてしまった
申し訳ないと思っていれば、彼の手が頬を撫でる



ゾ「…そんな顔、しやんといてや…」



撫でるその手に手を重ねて
そんなん、そっちこそ。と思わず心の中で零してしまう



辛そうに顔を歪めているのはどちらというのか




ゾ「声…もう出せへんの？」



か細い声、震えた掌

先程まで隠していた表情が顔を出し、
堪えていたものが一気に溢れ出した


貴方までそんな顔をしないで。

貴方まで気に病まないで。




そう願っても届くはずもない



ゾ「また、褒めてや……」



首元に顔を埋め、縋る彼の背に手を回す
ごめんね、ごめん。


言葉で伝えられない謝罪も、愛も、
一体何時になれば
私は声に出して、彼に伝えられる？



＿＿＿＿

悄然としない日常を
…声を失ってみた、抜粋

痛み、その問い(？？)→←共に歩んでいく為に(sha)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す