コウモリ傘【灰谷竜胆】 (ページ4)

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【不本意ながら】ページ4

「で、連れてきてしまったわけだけど……」

放ってもおけず、どうしていいかもわからず連れて帰ってきてしまった。

「とりあえずタオル」

ペタペタと濡れたストッキングで廊下を歩いて、部屋からバスタオルを引っ張り出してくる。
申し訳ないと思いながらスーツを脱がすと、筋肉質な体に刻まれた大きな入れ墨が現れた。

「あー、やってしまった……」

思わず天を仰いだ。喉元のそれを見たときは、まだオシャレで入れているのだと思った。けれど、これはたぶんちがう。カタギの人じゃない。訳がわからない事を言っていたのはたぶん抗争か何か、そういう世界のそういうやつだったんだろう。

やっぱり誰かに頼んで救急車を呼んでもらうべきだった！

「どうしよう」

タオルで体を拭きながら考える。見てしまった、関わってしまった。とはいえ、意識のない人間を今更追い出せない。さすがに良心が咎める。体を拭いて、怪我をしている頭を気をつけながらタオルを這わせた。

お兄さんは、未だ起きる気配はない。
強まった雨が窓を叩いている。

「一時間。寒いかもしれないですけど、ここにいてくださいね」

着替えるついでにブランケットを取りに行って、それを被せて財布を持って家を出た。