コウモリ傘【灰谷竜胆】 (ページ23)

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【予定変更2】ページ23

俺の弟は、いつからこんな重てぇ拗らせヤローになったのか。心底めんどくせー、と出る舌打ちを隠すことはしない。

「離す気ねぇなら引きずり込め」

竜胆にとっちゃ最良でAにとっちゃ最悪な策。囲われて、退路がなくなって。情報まで握られた一般人が逃げられるわけがない。

不用意に、弱った竜胆を優しさで絆したAも悪い。幸い、まだAはこいつの抱え込んだ重てぇ感情に気づいていない。竜胆本人すら、たぶんまだだ。

絶対に──、離したくない、一緒にいたい、俺のにしたい。自覚しててもその程度。今のところ大事にしたいって気持ちがセーフティーになっている。

Aの情報をスマホで見てた竜胆とこの一週間の竜胆。見ていたらよくわかる。こいつの中にあんのは、絶対に──、離さない、一緒にいさせる、俺のにする、だ。

もし、これがどこの誰かもわかんねぇ男とAが一緒にいるところでも見ようモンなら、間違いなくそいつが明日の朝日を拝むことはない。

そのうち帰してやろうと思ってたけど、シフトチェンジ。

「まあ、予定が変わることはよくあるよなー」

「あ？」

「短くない付き合いにしてぇなら、時間かけてやれよ」

「わかってる……」

抜けたトンネルの向こうで、人工的な光の海が俺達を出迎える。東京のベッドタウン──高いマンション郡の最上階。そこにいる気の毒な女を思いながら、頬杖をついて流れる景色を見送った。