#5太宰の提案 ページ6
私のそこそこ壮大な過去に皆が沈黙。
その沈黙を破ったのは手を顎に当て、何かを考え込んでいた太宰さんだった。
「Aちゃん。芥川君に会いたい?」
じっと私の瞳を見て問う太宰さん。
私は芥川の写真を見つめながら言った。
『会いたい、です。
でも、きっとそれはこの武装探偵社の皆さんにも、若しかしたらヨコハマにも被害を及ぼしてしまうかもしれない……そうですよね、太宰さん?』
「そう、その通り。
それに、我社はポートマフィア本部に忍び込むなんて無謀なことはしない。仕事じゃない限りね。」
その言葉に私はさらに頭を垂れる。
「でもね、Aちゃん。君がもし、依頼人となって、我社に芥川君の捜索願いを出して
"会いたい"
と言えば会うことは可能だよ。
私達は人を助ける仕事だからね。勿論、依頼人の頼みなら断らないし、断れない。だよね、国木田くん?」
「真逆……太宰、貴様……!!」
「そう、その真逆。でも、これはAちゃんが決めることだ。Aちゃん、どうする?」
『つまり、私が武装探偵社に芥川の捜索願いを出せば探して、会わせてもらえるんですね?』
「そういうこと♪」
ご機嫌な太宰さんが鼻歌を歌いながら言う。
国木田さんを見ると「ポートマフィアに飛び込むなんて……そんなの予定に入っていないぞ……」と手帳を見ながらブツブツ呟いている。
敦くんと鏡花ちゃんは既に2人で何かを話し合っているみたい。
ところどころ、芥川やマフィアといった単語が聞こえてくるから多分、忍び込む方法とかを考えているっぽい。
後ろからとんとん、と肩を叩かれる。
振り返るとタレ目が特徴的な谷崎先輩が立っていた。
「もしAちゃんがポートマフィアに行くつもりなら、ボクは全力でフォローするから……頼りないかもしれないけど……」
谷崎先輩はそう言って照れ笑いをした。
これだけ皆が協力してくれようとしている……
入って間もない私のために……
そう思うと涙が溢れそうになった。
くるりと太宰さんに向き合って私は頭を下げる。
『芥川……芥川龍之介を探して、会わせて下さい……!!』
「後輩の依頼だもんね、ちゃんと受けるよ。」
太宰さんはそう言うと国木田さんの肩を叩き、あとはパスというようにひらひらと手を振って、部屋を出て行った。
「はぁ……またアイツは。いや、今はいい。
……依頼内容をお聞かせください。」
72人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ