＊ ページ19
.
明日も授業あるから同じ服では行きたくない、と駄々をこねた私に佐久間くんは、じゃあ先にAちゃんの家寄ろうね、と言ってくれた。
今朝までの、悪魔の囁きは何処へ行ったのやら。
甘い甘い言葉が次々に降り注いできて、弱った心にはそれがやけに沁みた。
大学の最寄り駅付近で一人暮らしをする佐久間くんのお家には、もちろん初めて入るし、そもそも男の子の家に上がるのは高校生以来だ。
『お邪魔、します。』
《あんま綺麗じゃなくてごめんね？ま、ゆっくり寛いで。》
途中スーパーで買ったお惣菜をつまみながら、二人でテレビ見て、笑って。あべになんにもない、と答えたことがまるで本当かのように。ちゅーしたこと以外は。
昨日の一瞬の出来事を思い出して、佐久間くんの唇にふと視線を送った。形の綺麗な、ピンクの唇。特に手入れなんてしてなさそうなのに、柔らかそうなそれの感触は、昨日軽く触れただけでは思い出せなかった。
《口元じいっと見てどうしたの？あ、ちゅーする？》
寂しい心を埋めるのに、必死だったのかもしれない。
あべに求められないのなら、求めてくれる相手に差し出したらいいや。
『うん、する。』
《さっきから物欲しそうな顔、してたもんね。》
そのまま唇を食べられて。広くはない1Kに佇むベッドに二人で溺れた。
朝起きて、目の前に佐久間くんの白い肌が見えた時。
《もう、なんにもない、って言えないね？》
また彼は口角を上げて、にやりと笑った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 533人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まのか(プロフ) - もぉぉぉぉぉぉぉ！！最高ですっ！一気に読ませてもらって 仕事の疲れが吹っ飛びました！ｗ更新楽しみにしてますね＾＾ (2020年8月11日 20時) (
レス) id: 496b8676bf (このIDを非表示/違反報告)
セン(プロフ) - すごい面白くてあっという間に読んでしまいました。続きを楽しみに待ってます。 (2020年8月11日 19時) (レス) id: 0585149188 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：月叶
| 作成日時：2020年8月5日 0時
