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NO side
校門の前に残された筆と硯に、開けっぱなしの門。
"天女が脱走した"という話は、瞬く間に学園中に広がった。
そしてその話はもちろん、すぐに六年生や五年生、上級生達の耳に入り_
彼らは急遽集まって、天女対策……つまり、これからの動きを決める会議を進行していた。
「緊急で集まって貰ったのは他でもない。どうやら、天女が学園を脱走したらしい」
夕陽の射す静かな部屋、立花仙蔵の凛とした声が響く。
部屋は緊張した空気に包まれ、その場の全員が仙蔵の話にただ耳を傾けた。
「天女の目的はまだ分からないが……忍術学園の外で何かをしようとしている可能性は十分にあるだろう」
「何!?それはまずいな……」
六年い組の潮江文次郎は眉を顰め、声を上げる。
六年ろ組の七松小平太はならば、と言葉を続けた。
「やはり学園長先生に願い出て、早いうちに天に返すのが早い!」
「小平太、それは何があっても許可されないよ……負の連鎖が続くだけだ」
「伊作……」
いつにも増して真剣で厳しい伊作に、同室の留三郎はどこか不安げな表情を浮かべる。
「これだから天女は……最初から閉じ込めておくべきだったんですよ」
「三郎……今更そんな事言ってもどうにもならないだろう」
話に五年生も加わり、四年生も固唾を飲みこんで……議論は続いていく。
_何にせよ、天女脱走の知らせを受けた上級生の反応は様々で、感情的になる者もいれば冷静に策を講じる者もいた。
しかしここで共通しているのは、内心では焦っているという事である。
今回の天女は、今までの天女と違う_
それに気づいていた為、正直彼らとしても、天女に対する行動を決めかねていたからだ。
いつもであれば天女は天に返すものの、今回は殺傷許可が出ていない。
そして何より今回の天女は武術に長けていて、下手に手出しをしても返り討ちにされる危険があった。
「…では、決まりだな」
_結局。
日没までにもう時間も無い為、とりあえず捜索して、天女を捕まえるのが優先という事で議論はまとまった。
さあ素早く役割分担を……そう仙蔵が言いかけたその時、部屋の襖が大胆に開く。
「し、し、失礼します!」
皆の注目の先、息を切らして現れたのは三年生の富松作兵衛だ。
片手に千切れた縄を握り顔面蒼白な彼に、留三郎が駆け寄る。
「どうした作兵衛、今は大事な会議中だぞ」
「左門が、左門が……はぐれて、それで……
帰って来ないんです!!!」
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海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時