45 ページ47
「……っ、」
『しっかり掴んで!』
体重が持ってかれそうになるのを堪えながら、私はその子に呼びかける。
一方その子は、恐怖でも無く焦りでも無く、驚いたように声を上げた。
「な、なぜだ……!なぜ、天女が、下級生の僕を助けようと……!」
『天女とか今はどうでもいい!話は後で聞くから!』
「でも、もう腕が……」
掴んだその子の手から力が抜けていく。
それでも、私は身を乗り出してなんとか持ち堪えた。
『大丈夫!必ず助けるから!諦めないで!』
「……!」
その瞬間、その子の手に再び力が入るのを感じて、私も全身全霊で引っ張り続ける。
ときどき力が抜けそうになったけれど、なんとか彼を地上に上げることができた。
(……あれ、なんか前にもこんなことがあったような)
一瞬、そんな考えが頭を過ぎる。
けれど、今はとりあえず彼の無事を確認しなくてはと、すぐに思考を転換した。
暫く息を整え、私は立ち上がる。
『危なかったね……怪我はない?』
「は、はい……あの、僕……失礼な態度をとってしまって、すみません」
申し訳なさそうに俯くその子。
すごい方向音痴だけどめちゃくちゃ良い子なんだな、なんて心の中で呟く。
私は首を横に振った。
『全然平気、気にしてないから!私、月原A。えっと、お名前は?』
「三年の、神崎左門です。助けていただいて、ありがとうございました!」
_左門くんの話によると。
放課後になり、左門くんはお友達といっしょにおいしいと噂のうどん屋さんへ向かったという。
並んだ末にうどんは無事食べれたものの、帰り道のどこかでお友達とはぐれてしまい
学園を探し回って、今に至るという。
……彼はいつものことだと言うけど、やっぱりとんでもない方向音痴だ。
そう思わず笑ってしまうと、左門くんは不思議そうに首を傾げた。
「それにしても、天女さま……あ、Aさんはどうしてこちらに?」
『どうしてって……私、忍術学園の門で左門くんの声を聞いて……暗くなるし心配で、ここまで追いかけてきちゃったの』
「えっ!?僕?」
驚いたように声を上げる彼に、私は頷く。
『我ながらほんと無鉄砲だと思う……今だって、私も迷子だし』
……まあでも左門くんを助けることは出来たから、ここまで来て良かったとは思う。
とりあえず帰り道を探そう、そう声をかけて、私は歩き出した。
.
.
.
一方、その頃忍術学園では_
「……はあ!?天女が脱走した!?」
177人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時