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『ん……?生徒の子かな』
おつかいか何かから帰ってきたのだろうか。
その時は凄く元気だなーぐらいにしか思ってなかったけれど、門の前を走り去る音を聞いて、私はすぐに振り返った。
『あれ?』
今の足音……もしかして、通り過ぎちゃった?
とりあえず足を止めて待ってみるけど、門に人が入ってくる気配は無い。
そして、どうしたんだろうなんて考えさせる間もなく、今度はずっと遠くから声が聞こえた。
「忍術学園は、こっちかー!」
……いや、忍術学園はここなんですけど!
『ちょ、まって!』
私は、咄嗟に門の鍵を外す。
急いで外に出てみれば、遠い向こうに走っていく後ろ姿が見えた。
諦めようと思ったけれど、今は夕方……もうすぐ夜になることを考えるとやはり放っておけない。
『行くしかない!』
筆と硯をその場に置いて、走り出す。
その瞬間_
私は外に出てはいけないという学園長先生との約束も、無茶をしないでという伊作さんの言葉も、何もかも忘れていた。
外の世界へ、出てしまったのだ。
.
.
.
『はぁ、はぁっ』
彼を追いかけ、道を真っ直ぐに進んで、たどり着いたのは森の中。
近くにあった岩に腰を掛け、私は息をつく。
体力に自信はあったけど、こんなに走ったのは久しぶりで息があがる。
竹刀も背負っているから、尚更だ。
『やばい……何も考えずに出てきちゃった』
辺りを見回しても、視界に入るのは木とひたすら緑。
どうやらあの子を連れ戻すつもりが、自分が迷子になってしまったらしい。
『ていうかあの子、どうして自分の学校の場所分からないんだろ……方向音痴とか?』
にしても、方向音痴が過ぎるけど……。
そう息をついたその時、静寂な森の中に声が響いた。
「ここは、どこだー!」
『あっ!』
聞き覚えのある声に、私は立ち上がる。
……あの子だ!
『確か、あっちの方から』
次は逃さない、そう心に留めて声を頼りに再び森の中を進む。
少し奥へ進み、茂みをかき分ければ、その先にようやくその子の後ろ姿を捉えた。
『いた!』
やっと、追いついた。
私は、彼に近づいて声をかける。
『君!もう暗くなるから、忍術学園に戻ろう』
彼は驚いたようにこちらに振り返って、目を見開く。
そして、数歩、後退りをした。
「て、天女!?く、来るなっ……って、うわあ!」
後退りしたその先にある、急斜面の崖。
背中から落ちていく彼に、私は手を伸ばした。
『危ない!』
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海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時