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『あーなるほど……こうやって崩して、繋げるのか』
おだやかな昼下がり。
図書委員の人に貸してもらった本を使って、私は早速文字の勉強を進めていた。
最初は無視されてしまっているのかと思ったけれど……本を貸してくれたその人はとても親切だった。
勘違いして、少し失礼な態度を取ってしまったかもしれない。
『ふぅ』
これで10ページ……ようやく一段落ついた。
筆を慎重に置いてから伸びをして、私は大きく息をつく。
机に目を向ければ三冊の本と吉野先生から多めに頂いた紙が散乱し、紙にはまだ歪な形の文字が並んでいた。
『まだ下手くそだけど……初めてにしては上出来だよね!うん!』
筆にはなかなか慣れないけど、これでもマシな方である。
それに繰り返し書いたお陰で、なんとなく意味も分かるようになってきた。
『ふわぁーあ』
部屋に差し込む暖かい日差し。
昼ごはんをたくさん食べたからか、ぼーっとしていると、なんとなく眠気を感じてくる。
『よいしょっと』
一度本を閉じて、一つにまとめていた髪も解く。
私は欲望に逆らうことなく、そのまま床に横になった。
ちょっと硬いけど、座布団を枕にすればなんとなく安定して……
"墨、乾いちゃうかも"
そんなことを考えながらも、私はいつの間にか眠りについた。
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NO side
Aが部屋で穏やかな眠りについている、その頃_
忍術学園の校庭の隅のある木の下では、作法委員会委員長の立花仙蔵、そして四年生の綾部喜八郎が向い合っていた。
「話ってなんでしょう」
喜八郎がそう尋ねると、仙蔵は背後に隠していた踏鋤を取り出し、喜八郎の眼前に差し出す。
そして、小さく笑った。
「これはお前のだろう。昨日の夜、穴から回収しておいたぞ」
「ああ、すみません」
喜八郎が踏鋤を受け取ろうと、手を差し出す。
しかし、仙蔵は踏鋤を上に上げ、喜八郎の手を避けた。
「……なんですか」
「珍しいと思ってな。普段如何なる時も踏鋤を手放さないお前が……何か焦るような事でもあったのか」
「いいえ。ただ、後で使おうと思ってたんですが」
喜八郎の表情は変わらない。
けれど内心では、彼女を保健室に届けてからすぐに取りに行くべきだったと後悔していた。
「ここ数日の行動……作戦ということで間違いないな?」
仙蔵の試すような視線が喜八郎に突き刺さる。
けれども喜八郎は動じず、ただ微笑んだ。
「ええ、勿論……それ以外はあり得ませんよ」
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海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時