総髪揺らして竹刀片手に、天女さまが通る！【忍たま乱太郎】

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『……いい加減に、して』


……もう、耐えられない。


込められるだけの力を込めて、拳をぐっと握りしめる。


熱くなったのは恥じらいもあるけれど、主に怒りが原因だった。

鎖骨や首を触ってくるなんて……この時代はどうか知らないが、現代ならば警察沙汰だ。



「……？」



私からただならぬ何かを感じ取ったのか、これまで無表情だった彼が僅かに眉を顰める。

力が緩んだその瞬間、私は握り拳を思いっきり彼の腹部に食らわせた。



「……ぐっ、」

『せ、成敗！』



我ながら、かなり痛そうな一発＿



飄々とした彼も流石に堪えたのか、お腹の辺りを両腕で抱えて座り込む。

身体が自由になった私は、すぐに懐から苦無を出して目の前で構えた。



『目的と人数は！？ほ、他に武器を持ってるなら出して、あと、その……触ったらまた一発いれるから！』



……落ちつけ、落ちつけ私。


そう何度も自分に言い聞かせるけれど、未だにどうも動揺が抑えきれていない。

かといってこれ以上追い詰めるというのも、あまり気は進まなかった。



「……、」



暫くして、屈んだ姿勢のまま彼が立ち上がる。

その表情を見て、私は思わず目を見開いた。



『えっ、な、何が面白いの！？』

「……っ、ふっ」


彼は込み上げてくるものを抑えるように顔を手で覆い、肩を震わしている。


……そう。

彼は、笑っていた。


『な、なんで？』



「……ずいぶんと暴力的な天女さまだなと、っふ、」

『なっ、暴力的って、えー……？』


……いや、面白いポイントが全然わからん。

くすくすと笑うその姿は、先程までの大人っぽい雰囲気と違って、どこにでもいる少年のようだった。



「よいしょっ、と」


相当ツボに入ったのだろう、目尻に滲む涙を拭いながら彼が立ち上がる。

そして縄のようなものを出したと思えば、その先を私に差し出した。


『これは？』

「……引き上げますから、掴まって下さい」

『え！？助け……』


助けてくれるの、私がそう言い終わる前に縄の先を握らせると、彼は助走をつけてジャンプをする。

穴はかなり深いはず、ジャンプで届くわけ……と思ったものの、なんと普通に地上に到達していた。


『忍者、すごい……』


一度のジャンプでこの高さ。

こんなことは、物語の中だけだと思っていた。


「引き上げますよ、いいですか」

『あ、はい！』


綱を両手でしっかり掴んで体重を掛ける。

力強く引き上げられ、私も地上にたどり着いた。

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