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『天、女、さま?』
言われた言葉を、反芻するように呟く。
この人は何を言ってるんだろう、そう思った。
……ていうか、何だこの状況。
背中からゴツゴツした感覚が伝わって、木に寄っかかっているのだと分かる。
周りは雑木林、虫や何か分からない動物の鳴き声がして、心なしかお尻が濡れている気もした。
そして、私の目の前に緑の布らしきものを被った人が一人。
左右に一人と二人、そのまた向こうに二人。
皆、目の前の人の仲間なのかな。
なんか囲まれてるし……
ん?
えっ、今私、囲まれてる!?
『……っ!』
そう思った刹那、ぼんやりと霞がかかっていた思考と意識がはっきりしてきた。
様々な感情と疑問がどんどん脳内に浮かんで、何がなんだか分からない。
『は!?なっ、何、ここどこ?なんで?』
どこを見ても建物はおろか、街頭や標識さえ無かった。
見えるのはひたすら木と木と木で、真っ暗な空間が広がっている。
勿論、家の近くにこんなところは無い。
それに今日は学校があったし、部活で遅くなったけれど、ちゃんとバス停でバスを待っていた筈だ。
でも、そこからの記憶が……
そんなこんなで思考を巡らせていると、はじめに"天女様"と声を掛けてきた色白の男の人が、先程の私の問いに答えた。
「ここは、忍術学園の裏山です」
『は、はあ……』
裏山?忍術学園?
思わず首を傾げてしまう。
ドラマか映画の話をされているのだろうか。
それによく見ると、この色白の男の人も、後ろにいる人達も、和服のようなものを着ていた。
しかも全員が、髪を高い位置で結いあげている。
令和のこの時代に、皆揃って?
『あの』
「はい」
正直、凄く怖い。
言ってる事も意味分からないし、知らない山の中だし、包囲されてるし。
もしかすると……これはかなりまずいのでは。
『天女って……私のことでしょうか』
「勿論でございます」
にこりと笑顔を浮かべる男の人。
それが愛想笑いだとすぐに分かって、私は背中の竹刀と脇にあるスクバを確認した。
……大丈夫、ちゃんとある。
「私達は、学園より貴女様をお迎えに参りました。あちらで、衣食住何もかも提供致します。」
『要は、一緒に来いと?』
「……はい」
_暫しの沈黙。
『……すみませんけど、』
そんなこと信じられる訳が無い。
背中の竹刀を握り、引き出そうとしたその時。
ヒュッ、という音がして何かがこちらへ飛んできた。
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海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時