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『山本、さ……げほっ、』
「静かに……喋っちゃだめ」
何、この煙……?
間違えなくあの小さな球のようなものが原因の筈だけど、どこから飛んできたのか全く見えなかった。
とりあえず、言われた通りに口と鼻を塞ぎ、小さく屈む。
それでも肺が苦しくて、なんども咳が出た。
「この気配、二人ね……」
山本さんが、私を守るように片手を伸ばしつつ前に立つ。
すごい……気配なんて分かるんだ。
しかも人数まで把握出来ているなんて、どうしたら出来るんだろう。
……とまあそんな呑気なことを考えた、その瞬間だった。
「っ!」
何かに気づいたのか山本さんが懐から武器を出し、もの凄い速さで一歩踏み込む。
そしてすぐさま、激しい金属音が響き渡った。
『えっ!?』
流石にこの音を聞いてしまえば、何が起きているのかは私にも分かる。
今、私達は……いや、私は攻撃されているのだ。
学園長先生の嘘つき、と心の中で呟く。
次第に晴れていく煙の中で、私は必死に目を凝らした。
「……やけに早いと思ったら、山本シナ先生ではないですか」
見えてきたのは、暗い青の制服。
鎖のようなものを手に握り、不敵に笑うその人には、見覚えがあった。
"待て三郎、五年生は上で待機だって言われてただろ"
……そうだ。
雑木林で三郎さんを止めていた、あの人だ。
髪の毛が特徴的で、覚えていた。
「そっちこそ、五年い組の尾浜勘右衛門くんに、この煙玉は久々知兵助くんね。学園長先生のお話は聞いてないのかしら」
「さすがですね、先生。兵助は気配を消してたんですけど」
「質問に答えて」
ピリピリとした、鳥肌が立つ程の空気。
お互いが物凄い力をかけているから、武器と武器が押し合ってミシミシと音を立てている。
……助太刀に入らなきゃ。
そう思うけれど、伸ばした手は空を掴む。
それ以前に身体が震えて、まともに動かなかった。
『そんな……』
やがて、あちらが武器から手を離す。
そして、襲ってきた人……尾浜さんは負けましたと言わんばかりに息をついた。
「……話は聞いてましたよ。ただ、調子に乗られてはまた同じことになるので」
それと同時に、屋根の上からもう一人、同じ色の制服をきた人も降りてくる。
「勘右衛門」
「ごめん兵助、失敗だ」
「調子に乗るって、あのねえ……」
山本さんが呆れたように落ちた武器を拾い、尾浜さんに渡す。
私はそのやりとりを、ただ呆然として見ていた。
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海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時