もうひとつの夢見草ー山崎大輝に妹がいてー［山崎大輝］［ツキステ。］ (ページ5)

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4話「顔合わせ前②」大輝side ページ5

『もしもし？唯輝？元気してるか？』
『うん。お兄ちゃんごめんね。咲輝ちゃんのこと内緒してて。』
『あ、いやいいよ。唯輝悪くないし。咲輝のサプライズだろ？
…って唯輝。今病院だろ。後ろの音が家じゃない。』
「え！？お兄ちゃんどういうこと？」
「今聞くから。咲輝落ち着いて。」
携帯のマイク部分を塞ぎ、慌てる咲輝を宥める。
『え、あ…いや…』
『唯輝、誰も怒ってないから。本当のこと教えて。』
『…うん、こないだね、インフルエンザにかかちゃって。それは治ったんだけど今肺炎で入院してる。お母さんは、お父さんの出張？かなんかにどうしてもいかなきゃいけないとかでいない…』
唯輝は不安そうな声でそう告げた。
『そうか。そういう時は早く言っていいだよ？とりあえず今日の仕事終わったらそっち行くから。』
「お兄ちゃん、唯輝ちゃんは？」
咲輝が唯輝のことをちゃん付けするのは半パニック状態のバロメーターだ。
「咲輝、唯輝なら大丈夫。お母さんがお父さんの仕事の都合でいない時に体調を崩して入院したらしい。明日と明後日は兄ちゃんもオフだから今日の仕事終わったら一回静岡帰って唯輝に会いに行こう。」
「うん。」
「そして咲輝、大事なことだからよく聞いて。唯輝は咲輝以上に体調が不安定だ。この仕事をしてれば、こういうことがあっても毎回駆けつけられるわけじゃないし、兄ちゃんが一緒とも限らない。重大な場合は別だけど、こういう頻繁に起こる唯輝の体調不良を毎回毎回優先はできないんだよ？それでも、このお仕事続けられる？」
「本当に行かなきゃ行けないか、わからないかもしれない…その時はお兄ちゃん連絡くれる？」
「うん、そういう時は兄ちゃんにも連絡くるから、そしたら咲輝にも連絡する。それにお仕事大丈夫そうで静岡行く余裕ありそうな時も連絡するから。兄ちゃんが連絡しなかったら信じてお仕事頑張れるか？」
「うん、わかった…」
「よし、じゃあ顔合わせ頑張って、唯輝のお見舞いに行こうな。」

唯輝と咲輝は双子で、ふたりとも病気や障害、入院の辛さをよく知っていて。
双子ならではの共鳴もする。
比較的咲輝の方が病気も障害も軽く、日常生活もある程度は遅れるが、自閉傾向はひょっとすると唯輝より咲輝の方が強いのか予想外の事態に弱く、パニックでフリーズすることも多い。
事務所が同じなのが救いで、今後についてしっかり話す時間を作って貰わなければいけないなと思った。