溺れて、みずうみに (ページ32)

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着いた時は人の多さに目眩がしそうだったけど、遊園地は思っていたよりも楽しかった。

暗いところが苦手な私のためにお化け屋敷をスルーしてくれた亮平のために、憧れのジェットコースターは断念してあげた。

ゴーカートは意外と私の方が上手くて、亮平よりもはやくゴールすることが出来た。

メリーゴーランドは本物のお姫様になれたみたいで嬉しかったし、コーヒーカップも静かに流れる時間が楽しかった。

よく漫画や小説で出てくる観覧車にも乗った。

亮平が何か物欲しそうにこちらを見ているのがおかしくて、わざと外を見てやった。

その時に見た夜景、絶対に忘れないよ。

「あー、楽しかった！」

「ジェットコースター乗せられそうになった時はマジで死ぬかと思った。」

「だって亮平凄い顔するんだもん。」

「意地悪だなぁ。」

「へへっ。」

楽しい時間はあっという間で、気づけばもう家の近くを走っていた。

帰ったら亮平とはもう赤の他人で、また地獄の日々を送らなければいけないのか。

そう考えると憂鬱で、泣きそうになる。

「ねぇ、やっぱり何かあった？」

「…」

「ねぇ。丸わかりだから。」

「…」

「俺の事誤魔化せると思ってるでしょ？」

「…りょ、へ」

「話してよ。俺、Aの力になりたい。」

ずっと気にかけてくれていた彼は、やっぱり優しいから聞いてくれる。

そんな彼に甘えそうになるけど、脳裏に兄の怪我を負った姿とあの手紙が浮かぶ。

ジャニーズである亮平に、あんな目にあって欲しくない。

彼の未来を潰しちゃいけない。

私は精一杯笑って、鏡越しに見つめる彼の目を見つめ返した。

「お願いだから、何も聞かないで。」

何も言わず、彼と別れ、郵便受けのものを取り出す。

中にはやっぱりあの手紙が入っていて。

〈そんなに楽しそうにして、君はどこのどいつと幸せになるつもり？〉と書かれた物を発見する。

私の選択はきっと間違っていないはずだから。