一期一会 (ページ40)

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～壱馬～

映画の公開を控え、忙しい毎日だったからなのか

Aさんと顔を見て話してない日々が続いた。

いや、違う。

たぶん、距離を取られている気がする。

側から見たら、俺とAさんの距離感なんて

いつもと変わらないって思う。

俺にはそう感じられない。

あきらかにいつもと違う。

でも、相変わらず北人がAさんにベッタリで、

俺はこの疑問を彼女に確認する気さえ起こらなかった。

そしてその日は突然にやってきた。

次のライブへ向けてリハーサルを始めようとした

時、マネージャーから話しがあった。

マネ「…ということで、実は昨日でAさんと仕事

をする日は最後だったんだ。だから今日から以前い

たスタッフが復帰するので。」

ラ「「「え？！」」」

陸「どうゆうこと？俺ら何もAさんから聞かされ

てませんでしたよ？！」

北「そんな…。」

俺ももちろん何も聞かされていない。

あまりにも突然でリアクションすらできなかった。

マネ「そう言うと思ったよ。

みんなの顔見ると泣いちゃうから、本当にありがと

うございましたってAさんからの伝言。

彼女は彼女なりに、気を使ったんだと思うぞ。」

そう言って、マネージャーは菓子折りを差し出した。

こんな菓子折り１つや２つ渡されてお別れかよ。

そんな気持ちと、でもきっと優しくてド真面目な

Aさんのことだから、こういう形の方が忙しい俺

らにとって負担がないと思ったんじゃないかって。

マネ「まぁまあ、毎日一緒に仕事はできなくなった

けど、事務に戻って事務所にはいるんだから。

これで一生の別れじゃない。」

陸「俺、今日事務所行く！」

北「俺も！」

壱馬は行かないの？って顔で北人がチラ見してきた。

けど、俺は行かない。いや行けない。

俯き、何も言わない俺に隣にいた陣さんが気づいたのか、

陣「とりあえず、代表で俺と北人と陸くんで行ってきますわ！」

そう言う顔はマネージャーさんの方を見ていたけど

俺の肩をポンポンと叩いた。

頼みます。と心の中で呟いた。